完璧はない
先日スーパーに買い物に行った時、偶然昔の職場の後輩、恭子ちゃんに会った。
「うわぁ~久しぶりー!」
彼女に会うのは2年ぶりぐらい。年賀状をくれる数少ない昔の友人。
彼女の顔を見た瞬間、今年の年賀状に「昨年転職しました」と書かれていた事が頭に浮かんだ。
「元気?」
「はい、ころりさんも?」
そんな会話をしつつ、互いの仕事の話になった。
「ころりさん、お仕事されてるんですか?」
「うん…まぁ、派遣でちょっとだけね」
「私、昨年仕事辞めちゃったんですよ!アハハッ」
「……あ、年賀状に書いてくれてたよね」
自分が退職した事を話す恭子ちゃんが、必要以上に明るくて不自然に感じた。
* * * * * *
私と恭子ちゃんが一緒に働いていたのはかなり前だが、その職場で働いていた時、一番よく会話したのが彼女だった。後輩といっても少し年下で、私より後に入社しただけ。
人間的には私よりずっと賢い女性で、私はいつも彼女のようになれたらいいのに……とどこかで尊敬していた。
彼女はとても温厚で誰とでも仲良くなれるタイプ。控えめでいつもニコニコして人の話を聞いているような女性だが、芯がしっかりしていて、いざという時にはどんな相手でも言うべき事は言える人であった。
私が退職してからは、友人として彼女と年に1回程二人でランチをするようになった。
その頃私は既に引きこもりが始まっていた為、普段はほとんど誰とも会っていない。
だが彼女と会う時には「元先輩」として、精一杯笑顔で元気なフリをしていた。
彼女と会えばいつも仕事の話題で、普通なら引きこもっている私にとっては痛い話題のはずなのだが、不思議と彼女から聞く仕事の話だけは自然と興味を持てた。彼女の話し方に何の嫌味や自慢もなく、純粋に働く事に夢中になっているのが伝わってきたから。
誰の悪口も言わず向上心が高くて前向き。ただただ仕事に一生懸命な彼女が羨ましかった。
やはり彼女は私の尊敬する女性だ。
しかししばらくして、彼女もその会社を退職した。
その後徐々に私達はランチする事もなくなり、2年前に久々に会った時にはあれから更に2回転職したと聞いた。
だがその時も「今の職場、気に入ってます。みんないい人だし考え方が似ているんです」と言って目を輝かせていた。
だから今年の年賀状でまた退職したと書かれていた時には驚いた。
* * * * * *
「我慢の限界だったんです。ずっと辞めてやる!って思ってたから、やっとスッキリしましたよ」と言い、恭子ちゃんは明るく笑った。
「そっか、色々あったんだね」と私が言うと恭子ちゃんは、
「常識のない人達とは一緒に働けません!」と強い口調で言い切った。
――やっぱり違和感。
私が知っている昔の恭子ちゃんとはどこか違うように感じた。
やはり誰だって色々ある。何でも上手くいっている様に見えても、本当のところは分からない。その後、恭子ちゃんが昨年退職した会社の悪口を言い始めたのを聞きながら、どこかで安心している自分がいた。
人の愚痴を聞いて安心するなんて自分の小ささを実感する。
だが、別れを告げて去っていく恭子ちゃんの後ろ姿を見ていると、以前と違ってキラキラと輝いて見えなかった。
恭子ちゃんには悪いが、完璧な人はいないんだ、そう思い少し慰められている自分がいた。
だが彼女と会う時には「元先輩」として、精一杯笑顔で元気なフリをしていた。
彼女と会えばいつも仕事の話題で、普通なら引きこもっている私にとっては痛い話題のはずなのだが、不思議と彼女から聞く仕事の話だけは自然と興味を持てた。彼女の話し方に何の嫌味や自慢もなく、純粋に働く事に夢中になっているのが伝わってきたから。
誰の悪口も言わず向上心が高くて前向き。ただただ仕事に一生懸命な彼女が羨ましかった。
やはり彼女は私の尊敬する女性だ。
しかししばらくして、彼女もその会社を退職した。
その後徐々に私達はランチする事もなくなり、2年前に久々に会った時にはあれから更に2回転職したと聞いた。
だがその時も「今の職場、気に入ってます。みんないい人だし考え方が似ているんです」と言って目を輝かせていた。
だから今年の年賀状でまた退職したと書かれていた時には驚いた。
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「我慢の限界だったんです。ずっと辞めてやる!って思ってたから、やっとスッキリしましたよ」と言い、恭子ちゃんは明るく笑った。
「そっか、色々あったんだね」と私が言うと恭子ちゃんは、
「常識のない人達とは一緒に働けません!」と強い口調で言い切った。
――やっぱり違和感。
私が知っている昔の恭子ちゃんとはどこか違うように感じた。
やはり誰だって色々ある。何でも上手くいっている様に見えても、本当のところは分からない。その後、恭子ちゃんが昨年退職した会社の悪口を言い始めたのを聞きながら、どこかで安心している自分がいた。
人の愚痴を聞いて安心するなんて自分の小ささを実感する。
だが、別れを告げて去っていく恭子ちゃんの後ろ姿を見ていると、以前と違ってキラキラと輝いて見えなかった。
恭子ちゃんには悪いが、完璧な人はいないんだ、そう思い少し慰められている自分がいた。
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