楽しさと憂鬱
最近買い物に行くとバレンタインデーのチョコをよく目にする。
それを見る度に、楽しい気分半分、憂鬱な気分半分となる。
楽しい気分というのは、純粋に私がチョコ好きだから。
最近は特に、このバレンタインデーの時期にしか買えない限定の有名チョコが販売されたりするのが嬉しい。チョコの味が好きなのは勿論だが、パッケージのお洒落さ、箱を開けた時の感動がいい。繊細なデザインや可愛いチョコは食べるのは勿体なくて、見ているだけで幸せな気分になる。
なのでこの時期はほんの少し奮発して、自分用チョコを少し買ってみたりする。
そして夫にはうけ狙い的なチョコを渡す。
高級チョコの味に興味がない夫は、面白かったり大袋のチョコを渡す方が喜ぶから。
一方、憂鬱な気分というのはやはり職場でのチョコ配り。
過去に勤めた職場でも、渡すのか渡さないのか?渡すのなら価格はどれぐらい?そんな事を悩んだり相談したりするのが面倒だった。
よく、「職場の人にお金を使うなんて勿体ない」と愚痴る女子を見かけるが、私はそれよりも、バレンタインデーというイベント化されている事自体が苦手。
正直言って、必要なら会費を決めてもらって、誰かが代表で買ってくれれば楽なのに……と思う。
各自が買うとなれば、女性同士は面倒だと言いながらも、「同僚がどれぐらいのチョコを買ったのか?」探りを入れ合う。
「え?そんな高くしたの?1,000円までって約束したのにー」
「ごめーん、気に入ったのが少し高くて超えちゃったの」
以前にもそんな会話があった。
女性同士の張り合いが見え隠れし、それを聞いている自分もどこかで同じように気にしている。そんなくだらない事が面倒臭い。
また、チョコを貰う男性達も、ホワイトデーには私達が渡した3倍以上のお返しをくれる。
時々、明らかにこれは妻に買ってきてもらったのね、と分かるようなお洒落なお返しが返ってくる事もあり、妻も大変だなと思う。
そういう私も何度か夫に、「貰ったチョコのお返し用意しておいて」と言われてデパ地下に走った事があった。
こういうやり取りは意味がないように思えるが、それがいつもの私のダメなところなのだろうか。こんな事こそ、人とのコミュニケーションにおいて大切なのだろうか。
今年のバレンタインデーは幸いにして日曜日だ。
なので私は派遣先で渡さなくてもいい可能性が高いのでは……と密かに思っていた。
だが、同じ派遣社員の酒家さんが、「バレンタインデー、渡すんでしょ?どうします?」とパート女性達に相談していた。彼女らしい。聞いていた私はこれに乗り遅れてはいけないと思い、「もし渡すのなら私も一緒に仲間に入れて下さい」と慌てて言った。
だがパート女性達は、
「二人とも派遣だし、毎日来ている訳でもないんだからそこまで気を遣う必要ないんじゃないの?」と言った。
酒家さんはそれでも自分もチョコを渡したい様子だったが、古株パートの、「派遣は気を遣う必要なし!」という一言でようやく諦めた。
良かった。今年は悩まずに済みそうだ。
だがこのままこの職場に来続けていたら、来年もまた悩むのだろう……と、既に一年先の事を考えてため息をついた。
「ころりさんもどうぞ。もう他の方には渡しましたから」週明けに派遣先に行くと、席につくなり隣に座る派遣女性、酒家さんに可愛く包装された小箱を渡された。...
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