普通ではない





リビングテーブルの上に書類が無造作に広げられていた。

何だろう?と思って見ると、夫の会社への提出書類の様だった。
特に興味もない仕事内容の報告書のようなものだった為、書類を整えてそのままテーブルに戻そうとした。

その時、その書類の2枚目に書かれていた「妻」という文字が目に入り、おもわずテーブルに戻そうとしていた手を止めた。

その箇所を読んでみると、会社から転勤指示があった場合、対応可能か?という質問であった。
その回答欄に夫は書いていた。

「現在もまだ妻の精神状態は安定していません。まだまだ妻を一人残して単身赴任するのは難しいのが現状です。可能であれば現在の支店での継続勤務を希望します」

というような内容だった。

直接この書類を見たのは初めてだったが、以前夫から聞いた事があった。
会社から定期的に、仕事内容や今後の勤務先の希望について申請する機会があると。

そして私が鬱病の時、「妻が鬱病の為に早く帰宅させて欲しい。転勤も難しい」と会社に伝えてあるから――と夫が言っていた事があった。

それを聞いた時も、

「この人の奥さんって鬱病なの?」
「ご主人は大変ね」

夫の会社の総務の人にそう思われるのだろうと思うと、夫が「妻が鬱病である」とわざわざ会社に報告する事が嫌だった。



しかし、夫に世話をかけているのは事実だったし、確かに夫に早く帰宅してもらわないと、毎日一人でいる事も出来ない状態だった為、私は文句を言える立場ではない。夫の会社が考慮してくれたおかげで、私は随分助けられたのだから。

だが現在、あの頃に比べ私の精神状態は安定し、もう夫の会社に報告せねばならない程重症だとは思っていなかった。

しかしこの夫の文面を見ると、夫は明らかに私がまだ鬱病で、普通の人じゃないと思っているんだと思った。

確かに今夫に単身赴任されてしまい、私一人で暮らせるか?と聞かれると正直自信がない。誰一人心から話せる相手がいなくなり、ストレスで変になりそうだ。

しかし時々ではあるが現在は派遣で仕事に行き、病院にお世話になる事も減った。なのに夫はまだまだ私を普通ではないと思っていたのだと思うと悲しかった。

もう良くなったと思っていたのは自分だけだったのか。

そう思うと「普通の人」のフリをしていた自分がどんどん落ち込み、「どうせ私はいつまで経っても夫に迷惑をかける人間なんだ……」とネガティブ思考に傾いていく。

その後、書類を黙って見てしまったので、夫に見たことを謝った。

「ごめん、見ちゃったよ」

夫はすぐにその妻の事を書いた箇所を思い出した様で、

「あ、あれは……僕が転勤したくないから、今でも口実としてずっと書き続けてるだけだよ」と言った。

その顔から気まずさが伝わってくる。別に責めているつもりはないのに。

夫の会社の人に「この人の妻は鬱病なのね」と思われ続けるのも嫌だ。
だが夫自身に、私が鬱病だとこれからもずっと思われ続ける事の方がもっと辛い。少しづつ積み上げた階段が崩れていく気分がした。




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Posted byころり
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