自己満足
今年は冬はずっと暖かい日が続いていたが、最近急に寒くなった。
先日も朝から雪が降り積もっていた。
だが夕方になり雪は止み、日差しも当たってきた。その日丁度休日だった夫が「今日は一緒に散歩に行けそうだね」と愛犬を抱きながら言った。多少雪は残るが、日差しがある分なんとか行けそうだ。
私達はいつもと違う公園に向かった。
そこは歩道も綺麗に整備されており、中心には多目的な運動場や、サッカー場、テニス場などがある。犬の散歩はOKだが、どちらかというと散歩というより、皆が運動に来るような公園だ。
家を出る時には日差しが出ておりポカポカした天気だったのが、公園に到着し、車を降りるとまた天気が急変し、ピューッという音が聞こえてくるぐらい、冷たい風が頬を突き刺した。日差しもなくなり、今にも雨か雪が降ってきそうな薄暗い雲が私達に覆いかぶさった。
でも折角来たのだ。
「少しだけ歩いて帰ろうか」と、私達は愛犬に防寒服を着せ、しばらく歩道を歩いた。
久々に外に出る事が出来て愛犬は嬉しそうに前を歩いた。
一方私と夫は寒さのあまり、無言で顔を強張らせながらひたすらジッと我慢しつつ黙々と歩いた。
20分程歩いただろうか。
そろそろ帰ろうかと思った時、「ミャーッ」と小さな声が聞こえた。
キョロキョロと辺りを見渡すと、3メートル程先にあるベンチの下で、小さな子猫がこちらを見て座っていた。
産まれたて……というような大きさでもない。生後2、3ヶ月といったところだろうか。
しかし両手に収まりそうなぐらいのまだまだ子猫だった。
薄いグレーの毛並みに、ブルーの瞳が愛らしい子猫。
大抵はこのぐらいの子猫の傍には親猫がいるものだが、周囲にはこの子猫一匹しかいない様子。一人ぼっちでこんな寒空に……。とても見ていられない。
私はつい「こっちにおいで」と、舌を鳴らして猫を呼んだ。
だが普段、野良猫は寄ってくる事はない。
それもこちらは犬を連れているのだ。シャーッ!と毛を逆立てて怒る猫が多い。
しかし驚いた事に、私が呼ぶとその子猫はすぐに私達に近付いてきた。
「え⁉来たよ!こっちに来るよ!」
私は興奮して夫に言った。
夫も「ホントだね。珍しい。きっとこの公園で人慣れしてるんだよ」と言っていた。
子猫は私達のすぐ目の前に来てチョコンと座った。
「ニャァ~オ」
明らかに先程とは違う、甘えた声で私達を見つめる。
愛犬も子猫がまだ小さいからか、全く怒る事もなくクンクンと臭いを嗅いでいたし、子猫も大人しくジーっとしている。
「どうする?ねぇ、どうする?」
私は連れて帰りたい気持ちでいっぱいだった。
だが夫はため息をつきながら言った。
「無理だろ」
「でもこの寒さの中で放っておける?それにこの子、人懐っこいし、犬とも仲良く出来そうな子だよ?」と私は必死に訴えた。
だが夫の答えはNO。
「飼えないんだから、一時的な保護は自己満足なだけだろ」と言われた。
その後も夫に訴えたが、夫の気持ちは変わらなかった。
諦めるしかない。こうなってしまっては意味なく子猫を呼び寄せてしまって、罪な事をした。
小さな子猫に「ごめんね」と言いその場を去った。
もうその時にはかなり吹雪いており、車に乗ってから一度だけ振り返るとまだ同じ場所に子猫は座っていた。どんどん離れていく小さな子猫が小さな点に見えた。
明らかに先程とは違う、甘えた声で私達を見つめる。
愛犬も子猫がまだ小さいからか、全く怒る事もなくクンクンと臭いを嗅いでいたし、子猫も大人しくジーっとしている。
「どうする?ねぇ、どうする?」
私は連れて帰りたい気持ちでいっぱいだった。
だが夫はため息をつきながら言った。
「無理だろ」
「でもこの寒さの中で放っておける?それにこの子、人懐っこいし、犬とも仲良く出来そうな子だよ?」と私は必死に訴えた。
だが夫の答えはNO。
「飼えないんだから、一時的な保護は自己満足なだけだろ」と言われた。
その後も夫に訴えたが、夫の気持ちは変わらなかった。
諦めるしかない。こうなってしまっては意味なく子猫を呼び寄せてしまって、罪な事をした。
小さな子猫に「ごめんね」と言いその場を去った。
もうその時にはかなり吹雪いており、車に乗ってから一度だけ振り返るとまだ同じ場所に子猫は座っていた。どんどん離れていく小さな子猫が小さな点に見えた。
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