子なし夫婦にとっての犬
私達は結婚してしばらくし、犬を飼う事にした。
今から思うとそんな事より妊活を焦るべきだったのに、そんな事は頭に無かった。
愛犬はとても可愛くて。
夫婦の生活が犬中心となり、食事をする時も眠る時もいつも中心には愛犬がいた。
友達もいない、実家にも帰らない、仕事もしていない、買い物さえも行けなかった私。
そんな誰とも会わない生活の中、唯一一緒にいてくれる存在、それが愛犬だった。
その頃に比べると今は随分私の症状も良くなったが、あの時この子がいなかったら、今の私ではなかったかもしれないと思う。
どんなに感謝してもしつくせない程、愛犬の存在は大きい。
見ているだけで泣けてくるほど大好きだ。
だけど40歳が近付いた頃、子供が欲しいと強く思い始めた頃、ふとした瞬間に思う事があった。
「もしこの子が人間の子供だったらなぁ」って。
もしこの子を飼い始めたあの頃、子作りを努力していたら・・・もしかして今頃子供がいたのかな?って。
一瞬でもそんな風に思ってしまった自分が悲しく、愛犬に「ゴメンね、大好きよ」と言いながら涙が出た。
ある時、私がそんな風に思う時があると夫に言うと、「そんな事言うなよ。この子が可哀想。どんな子供よりこの子の方がずっと可愛いんだから」と言った。
また別の時、
夫が犬を軽く放りあげて遊んでいた。
子供を「高い高い」ってするアレ。
私が「ダメダメ!犬は子供じゃないんだからそんな事しても喜ばないよ!怖いからやめてよ」と言うと、
夫は、「これぐらい大丈夫だって。だって男の子なんだから」と言った。
私は胸がギューッと締め付けられた。
犬を擬人化している夫の言葉に。
夫とワンコの姿が涙で滲んだ。
私だって夫に負けないぐらい、愛犬を大切に思っている。
だけど夫のそのストレートな愛情表現、言葉に、なんとも言えない切ない気持になった。
夫は子供がいなくてもいいよ、といつも言ってくれているが、この時ほど夫に申し訳なく思った事はないかもしれない。
今では夫にとって愛犬は、かけがえのない子供になっている。いや、私にとっても、やはり大切な子供なのだ。
今こうして書いている時も、膝の上でスヤスヤと安心して眠っている姿を見ると、自然と私の心が穏やかになる。
これでいい。夫婦とワンコ、これからもこれでいいよね。
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