突然の電話
そろそろ年賀状を準備をしようかと思っている。
ここ数年は年賀状を出すという作業も面倒、人との繋がりは断ち切りたい、そんな思いが強すぎて「年賀状は来た人にだけ出す」というパターンになっていた。なのでいつも作業するのは1月2日頃。
そんな風に遅れて届く年賀状が続けば、相手は自然と送ってこなくなるだろうと思っていたのだが、結局それはなくて毎年ほぼ同じ人から送られてくる。全く付き合いがないというのに。
きっと年賀状ソフトのデータとして私も登録されていて、昨年のいつ届いたかなんて気にせずまとめて印刷しているからだろうと思う。
こういうのって意味ないよなぁ……そう思いながらも、どうせ送るならたまには元旦にちゃんと届くように送りたくなった。
送るといっても、引きこもってる間に繋がりもかなりなくなり、枚数もほんの少し。
昨年届いた年賀状を確認した。
喪中ハガキが届いていた人はいなかったか?昨年通り出しても大丈夫か?
そんな中で「あ……」と目に留まった人が一人いた。高校の同級生で、社会人になり、結婚し、彼女はその後離婚した。だがその間もこうしてずっと年賀状を送り続けてくれていた。私も返していた。
彼女はさっちゃんと言い、高校の時に同じクラスになった事があり、親友と呼べる程ではないが、ある一定の期間、よく彼女と遊んだり、いつも一緒に居た時期がある。
あの年代の女子によくある事で、学年が変われば友達も変わる、みたいな、彼女と同じクラスだった1年間だけが唯一親密な関係だった。
だが、高校・大学を卒業してからも、彼女から時々連絡があり、ごくたまにランチなどをしていた。会話の内容は仕事の愚痴や、彼氏いるの?なんていう、その年代の女子らしい話。
だが、お互い結婚したあたりから全く会わなくなった。ほぼ同時期に結婚したのだが、お互いに「結婚しました」のハガキを送り合ったところで、それぞれ忙しくなったのか、互いの事を忘れてしまったのか、どちらからも連絡を取ることはなかった。
そんな彼女から、今年の夏、なぜか急に連絡があったのだ。
ある日突然携帯が鳴り、登録していない電話番号だったので不信に思いつつも出てみたら彼女だった。
「久しぶり。分かる?」と言われて一体誰が分かるだろう。
20年近く会っていないのに分かるはずがない。最初は間違い電話かと思った程だ。
「あの?どちら様でしょうか?」と言うと電話の向こうで彼女は言った。
「わたし、さっちゃん」
一瞬にして「え?あのさっちゃん?」と思いつつ、念の為に「○○幸子さんですか?」とフルネールで確認した。
「そう、ごめんね、急に電話して」
やっぱりあのさっちゃんだった。
私は丁度20代の半ばぐらいで初めてガラケーを購入したが、その頃から電話番号を変更していなかった。さっちゃんは私の番号を削除していなかったのだろう。私の方は流石にもう連絡はないだろうと、機種変更した時に彼女を削除したように思う。
だから、まだ彼女は私を昔の友人だと思ってくれていたのだろかと思うと少し嬉しかった。
「ううん、そんな事ないよ。でもホント久しぶり。ビックリしたわ」と言うと、
「元気?」
「うん、さっちゃんも?」
と、当たり障りのない会話から始まり、さっちゃんのご両親が他界してしまった事、今は一人暮らしだという事などを知った。離婚してから再婚したのか知りたかったが、「一人暮らし」だと聞いて、それはないのだと分かったし、子供もいないのだろうと察した。
「ころり、子供は?仕事もしているの?」と聞かれたので、どちらもない事を伝えた。
正確には時々派遣に行っているが、人に対して「仕事しています」と言える程ではないし、何となく説明するのが面倒だったから。
すると彼女は、「いいなぁ~奥さんやってるんだぁ。羨ましいわ」と少しお道化た口調で言った。
実際の私は人から「いいなぁ」と言われるような生活でも人生でもない。だか何も知らない人から見れば、優雅に仕事をせずに妻をやっているように見えるのだろう。
また、さっちゃんは自分自身も子供がいないから、「子供がいなくて可哀想」といった発想もなさそうだった。その点はこちらも気楽でいい。
「さっちゃん、仕事は?」と私は聞いた。
きっと一人で暮らしているのなら、正社員で働いているのだろう。
しかしさっちゃんは「うん、それなりに」と答えただけで、それ以上詳しく話さず、私もそれ以上突っ込まなかった。
そして、ある程度会話した後、さっちゃんが遠慮がちに言い出した。
「ねぇ、ころりの家に遊びに行ってもいい?」
久々に電話がきて、次は遊びにくる?
急な展開にどうしたの?と戸惑ったが、そこは高校時代の同級生。
現在の職場や近所、アラフォーになってから出会った女性達とは違い、昔の友人というのはどこかで心を許している部分がある。
何か相談でもあるのだろうか?
私は「いいよ。いつでも」と言うと、さっちゃんは嬉しそうに、それでいて「ごめんね」と何度も謝りながら、遊びにくる日を決めた。
―――続きます。
私は丁度20代の半ばぐらいで初めてガラケーを購入したが、その頃から電話番号を変更していなかった。さっちゃんは私の番号を削除していなかったのだろう。私の方は流石にもう連絡はないだろうと、機種変更した時に彼女を削除したように思う。
だから、まだ彼女は私を昔の友人だと思ってくれていたのだろかと思うと少し嬉しかった。
「ううん、そんな事ないよ。でもホント久しぶり。ビックリしたわ」と言うと、
「元気?」
「うん、さっちゃんも?」
と、当たり障りのない会話から始まり、さっちゃんのご両親が他界してしまった事、今は一人暮らしだという事などを知った。離婚してから再婚したのか知りたかったが、「一人暮らし」だと聞いて、それはないのだと分かったし、子供もいないのだろうと察した。
「ころり、子供は?仕事もしているの?」と聞かれたので、どちらもない事を伝えた。
正確には時々派遣に行っているが、人に対して「仕事しています」と言える程ではないし、何となく説明するのが面倒だったから。
すると彼女は、「いいなぁ~奥さんやってるんだぁ。羨ましいわ」と少しお道化た口調で言った。
実際の私は人から「いいなぁ」と言われるような生活でも人生でもない。だか何も知らない人から見れば、優雅に仕事をせずに妻をやっているように見えるのだろう。
また、さっちゃんは自分自身も子供がいないから、「子供がいなくて可哀想」といった発想もなさそうだった。その点はこちらも気楽でいい。
「さっちゃん、仕事は?」と私は聞いた。
きっと一人で暮らしているのなら、正社員で働いているのだろう。
しかしさっちゃんは「うん、それなりに」と答えただけで、それ以上詳しく話さず、私もそれ以上突っ込まなかった。
そして、ある程度会話した後、さっちゃんが遠慮がちに言い出した。
「ねぇ、ころりの家に遊びに行ってもいい?」
久々に電話がきて、次は遊びにくる?
急な展開にどうしたの?と戸惑ったが、そこは高校時代の同級生。
現在の職場や近所、アラフォーになってから出会った女性達とは違い、昔の友人というのはどこかで心を許している部分がある。
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―――続きます。
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