悲しみの夜





夫の知人が突然亡くなったと連絡があった。

まだ40歳になったばかりの男性だ。それ程親しい間柄ではなく、仕事上での顔見知りらしい。私にとっては顔も名前も知らない人であった。

それにしてもその若さに驚く。

それも後で聞くと、彼は全く病気などをするタイプではなく健康そのものというスポーツマンタイプで、前日までは元気に働いていたのに、翌朝に奥さんが見たら突然亡くなっていたらしい。そんな事があるなんて……。

自分が気付かぬうちに何かの病気を持っていたのだろうが、全く前触れもないというのが怖い。

通夜から帰宅した夫は珍しく落ち込んでいた。

元々夫は他人との人間関係はドライであり、時々誰かの葬式等に参列しても淡々としていた。あまりそういった事で感情を表に出すような人ではなかった。

しかし今回帰宅した夫は、静かに喪服を脱ぎソファに座った後、深いため息をついた。

「おもわず泣いてしまった」

そうつぶやく夫。

確かに不幸な出来事ではあるが、ほとんど付き合いがなかったような人に対して、そこまで感情移入するというのが意外だった。

「そんなに仲が良かったの?」

そう返すと、「そういう訳じゃない。あまり会話した事もなかったし」と言う。

それなのにどうしたの?と聞くと「もし一緒に通夜に参列していたら分かると思うよ。とにかく皆の悲しみ方が酷くて見ていられなかった」と言う。


まだ若いその男性には子供が二人おり、子供達は泣きじゃくり、それを支える母であり故人の妻である女性は憔悴しきっていたと言う。他の参列者達も、あまりにも突然の事であり、想像もしていなかったこの訃報に皆感情をむき出しに涙していたらしい。

……そうだろう。少なくとも想像を超える悲しみだという事は想像できる。

その後夫は、

「こんな場面を見ると普段悩んでる仕事やお金の事なんて大したことなく思える。健康でいられる事が何より大事だと実感したよ」と言っていた。

私は夫が持ち帰った会葬礼状を開き、喪主の箇所に書かれているその故人の妻らしき人の名前から目が離せなかった。

もしこれが自分だったら?と想像してしまう。

私が今すぐに夫を失えば、こんな風にしっかり喪主をする自信がない。私もこの人生を投げ出したくなるだろう。とても正気で生きていけるとは思えない。

それでも現実にはお葬式をせねばならず、悲しんでいる暇はない。手続きや段取りに追われるし、何より親戚達と一人で関わらなくてはならないなんて、想像するだけで私には無理だと思う。

毎日何を楽しみにして生きていいのか分からない。ずっと物足りなさを感じながら暮らしている。そんな私に今の生活がどれだけ幸せなのかを問われているような出来事だった。




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Posted byころり