隣人





うちの裏隣りの家の人はほとんどそこに住んでいない。

かなりの豪邸で庭がとても広いのだが、人が住んでおらず普段手入れをしていない為に木が鬱蒼と茂り、背丈ぐらいになる草がボウボウに生えている。

外から見ると草むらの中に家が埋もれている様に見えるほどだ。

その大きな庭が丁度うちの家と隣接している為、以前から不衛生だと思っていた。

すると先日、その家の主が久々に現れた。60歳は超えていると思う年配の夫婦だ。二人は早朝から電動草刈機でガーッ!ガーッ!と草を刈り始めた。それだけではなく、そのうち木の枝までノコギリで切り落とし始め、朝から騒がしいのは少々迷惑だが、やっとあの鬱蒼とした草むらがスッキリするわ……と少し安堵していた。

2時間程した後、私と夫は買い物に出かける為に一緒に玄関を出た。ちょうど裏隣の草刈りもほぼ終わりの様であり、見てみるとその夫婦が二人で草や枝を掃き集めて山積みにしているところであった。

横目に見ながらそのまま買い物に行こうとしたのだが、ふとうちの家の壁を見ると――――

虫・虫・虫!!

軒下から一階まで家の壁全面に点々と無数の虫がくっついている。バッタやコウロギというような種類が分かるものもあったが、何だかよく分からないがゴキぐらいの見た目、大きさの虫がなぜが一番多く、鳥肌が立つぐらいビッシリと張り付いていた。

虫だけでなく、刈られた草も湿っていたのか、ベッタリとうちの家の壁に張り付いている。

一緒にいた夫も見て、これは酷いわと呆然とした。

雨が降るとか台風がくるなど、自然と飛んでいくのを待つしかないんじゃないか?と夫に言われたが、あまりに酷すぎてこのまま放置なんてとても出来なかった。


それで、仕方なくホースを伸ばし、水で流し落とす事にした。

ビッシリついた虫や草はなかなか洗い落す事が出来ず、そこから1時間近く作業を続けていた。

私は仕方がないと思いながらも、私達が今こうして洗い流している事が、その隣人にとって嫌味に受け取られないか気になった。隣人もまだ作業を続けていた為、私達が必死で洗い流しているのは気付いているはず。

「なんだか気を遣うわ」と私が言うと、夫は「そんなの向こうが悪いんだから当たり前だろ」と憤慨し、「少しぐらい謝りにくるべきだ」と文句を言っていた。


それでも裏隣がいつまでも草むらでは私達も困る。あちらも折角綺麗にしてくれたのだし悪気がある訳ではないのだから――と、私は夫をなだめていた。


そして、しばらくするとその隣人がうちにやってきた。

「あの、何か飛んでいきました?」と隣人。

「ええ、虫や草がたくさん飛んできたので洗い流しているんです」と夫。

私は見ていてハラハラした。夫がこれ以上何か文句を言わないだろうかと。

すると、隣人は「そうですか」と言っただけで立ち去ってしまった。この後夫は、少しぐらい謝るべきだろ!と、更に機嫌が悪くなった。

しかし私はそんな事はどうでもいい。あの隣人が気を悪くされていないかばかりが気になる。もしこの近所の人達と付き合いがあるのなら変に噂されるのではないかと心配でならない。

夫には、そんな風に人の顔色ばかり見ずに少しは自分の意思を持てと言われたが、こんな事さえも気にしてしまうのが私なのだ。

虫や草は取れたが、隣人との心配事が残ってしまった。




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Posted byころり