プロのアドバイスだけど従えなかった

―――前回の続き。
注文するのを忘れてしまう程、私はその女性店主に愛犬の事を話し続けた。
女性店主と私の話を聞き、トレーナーが言った。
「こういう子はいます。環境の影響もありますが、お話を聞いていると生まれ持った気質のような気がします」
そして、食が細いのも用心深い性格が関係しているらしい。
カフェでしつけ相談
「こういう恐怖心が強い子には、まず安心感を与える事が大事です」
私は食い入るようにトレーナーの話を聞いた。
無愛想で取っつきづらい雰囲気はあるが、やはり専門家なので頼れそうなオーラがある。
気付けば私達と店主とトレーナーが円陣になり、カフェの空いたスペースで愛犬のしつけ教室のような状態になった。
他に客がいなかったので出来た事だが。
そして前半は主に食事方法の改善をアドバイスしてもらった。
参考になる情報もあり、さすがトレーナーなので説明も上手い。
不安感が消えるジェントルリーダー
その説明を聞いている間、愛犬はずっと夫の腕に抱かれていた。
床に下ろしてもすぐに夫の膝に逃げてしまう。
その様子を見ていたトレーナーが言った。
「安心感を与えるおすすめのグッズがあるんです」
そう言いながら、大きなバッグから口輪のようなものを取り出した。
ジェントルリーダーというらしい。

ペットセーフ ジェントルリーダー
トレーナーが持っていたバッグはまるでドラえもんのポケットのようで、他にも中には色んな犬用品が入っていた。いつも持ち歩いているのだろうか。
そしてそのジェントルリーダーを、愛犬の口と頭に装着してみるように言われた。
大丈夫だろうか…。
何でも怯える子だけど…。
可哀想な気がする…。
私が戸惑っているのが伝わったのか、トレーナーが言った。
「見た目はアレですけど、犬は全く痛くも辛くもないんです。むしろツボが刺激されて安心するんです。母犬が子犬を運ぶ時のように」
というような説明をされた。
そうなのか…私はこういったグッズを使った事がなく、存在も知らなかった。
震える愛犬
そして指示されたように愛犬に装着してみた。
私が怖くて緩めに。
するとトレーナーが、「もっと強く締めないと意味がありません」と言う。
しかし私はこれ以上強くは締められない。やはり可哀想に思えて。
トレーナーの手前、ほんの少しさらに締めたフリをしてみたが、納得していない様子。
そして私の手の中で愛犬がブルブルと震え始めた。
明らかに怯えている。
「震えてます」
私がトレーナーに言った。
すると、「最初だから。もう少し慣れるまで様子を見て」と言われた。
しかし…小さな体でブルブルと震え続ける愛犬。
私はたまらなくなり女性店主に、「ね?震えていますよね?怖がっていますよね?」と助けを求めた。
しかし女性店主もトレーナーに気を使うのか、この方法が正しいと思うのか、「そうですね…う~ん」と言ったまま黙ってしまった。
アドバイスに従えず
すると次の瞬間、夫が手を伸ばし、パッとそのジェントルリーダーを愛犬から外した。
「ありがとうございました」
そう言ってそれをトレーナーに返す。
トレーナーは納得いかないようで、「もっと長い時間装着していれば慣れてくるんですよ」と言っていた。
そうかもしれない。
しかし私達にはとても使えそうもない。使いたいと思えない。
女性店主とトレーナーに礼を言い、店を出た。
長時間付き合わせてしまったので指導料を払わせて欲しいと言ったのだが、受け取ってもらえなかった。
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