渡れなかった吊り橋

夫と愛犬を連れて公園に散歩に行った。
少し遠い公園なので、普段私一人では行かない公園。
山の中にあり、人は少なくひっそりしている。
山道を歩いているとまだまだ肌寒く、手足の冷えを感じた。
山の中の吊り橋
すると先の方に分かれ道があり、左側に行けば山の頂上に向かう。右側に行けば吊り橋へ。
「久しぶりに吊り橋の方に行こうか」
夫にそう言われ、私も頷いた。
この公園(というか山)には川が流れている箇所があり、そこに吊り橋がかかっている。
以前先代犬を連れてこの公園に来た時も、何度かその吊り橋を渡った。
そして久しぶりに懐かしいその吊り橋を渡り始めたのだが…。
恐怖心で足が止まる
あれ?何だか変だ。
一歩一歩足を進める度、ゾワゾワと嫌なものが足元から上がってきた。
夫は愛犬を抱いてどんどん前を歩いていく。
「ちょっ…ちょっと待って!」
私は必死について行こうとするが、前に進む程足がすくむ。
怖い。
気持ちと体がグルグルと回っているような感覚で、眩暈がした。
「怖い、怖い」
私はそう言いながら、それでも前に一歩ずつ進んだ。
そんなはずは無い。
私は高所恐怖症ではないし、こういったものは得意なはずだ。
若い頃から遊園地のアトラクションなども得意で、皆が絶叫するような激しい乗り物などが好きだった。
なので以前この吊り橋を渡った時も、「気持ちいい」と思った程で、スイスイと渡った記憶がある。
なのに…。
私は遂に中央で止まってしまった。
あぁ、吸い込まれそう。
出来ない事が増えていく
吊り橋の床はグレーチングで、下を見ると高さを実感する。そこは深い谷底になっていて、海のような川が流れていた。
夫や私が歩く度に吊り橋は大きく揺れ、怖くて私はしゃがんでしまった。
どうした私?
こんなの平気だったはずなのに。
その後、夫に限界だと伝え、そのまま這うようにして引き返した。
地面に戻ってからもゾワゾワとした恐怖心が消えず、一日中気持ちが落ち着かなかった。
これは精神的に病んでいるせいなのか。
それとも単に三半規管が弱っていたり、年齢的なものだろうか。
出来ない事が増えていく。
パニック障害は成功体験をつむと良いと聞くが、これでは逆ではないか。
もう吊り橋は二度と渡らないと思う。
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