犬なんか





―――前回の続き。


その後法事は無事に終え、親戚達が広い和室に集まり食事をする事になった。

しかし皆どこか他人行儀で、互いに探り合いながら会話をしている様子だった。
私達は滅多に会う事がない為、親戚とはいえ他人同然なのだ。

この日は久々に従兄弟達が全員揃っており私を含めて10人程。その親である叔父や叔母、従兄弟達の子供なども含めると大所帯となっていた。
皆各自近くに座っている人と話したり、退屈そうにスマホをいじっている従弟もいた。

私の母も何か親戚と話したい事があったのか、私とは少し離れた所で何やらヒソヒソと会話している。

従妹達は皆子供がいる為、女性陣は集まって子供同士を遊ばせていた。私は手持無沙汰で何をするでもなく、居場所もなかった。
こんな所まで来ても、子なしである孤独を感じなければならないんだと実感した。


「ころりちゃん、元気だった?」

気を遣ってくれたのか、一人の叔母に声をかけられた。

「はい、叔母さんもお元気そうで」と答える。いつもにこやかで優しい叔母だ。

その後私は叔母と他愛無い会話をしていたのだが、しばらくするとその叔母の夫がどこからともなくやって来て、私の隣に座った。

私はこの叔父が子供の頃から嫌いだった。物をハッキリ言う割に自分からは話しかけない。堅物という感じ。私は触らぬ神に……とばかりに、隣に座った叔父には話しかけず、そのまま叔母と話し続けた。

そして叔母が「ころりちゃん、犬飼ってるって聞いたわよ」と言い出した。どうやら私の母に聞いたらしい。

「はい、そうなんです。凄く可愛いんですよ」と言って私が笑うと、叔母も一緒に「見てみたいわ」と言い一緒に笑ってくれた。

その時だった。


隣で一人ビールを飲んでいた叔父が、強い口調で言った。

「犬ってなんだ!子供の一人も産みもしないで犬なんか飼ってる場合か!」

* * * * * * *

一瞬にして静かになるとはこういう事か。それまで会話していた親戚達が皆口を噤んだ。

私には全く分からない。なぜこんな事で叔父が怒るのか。

叔父は続けた。
「親に孫を見せもせず、犬なんかで喜んでいて悪いと思わないのか!」と。

私は何も言葉を返せなかった。返そうとも思わなかった。ただ黙って下を向いていた。

隣で聞いていた叔母は申し訳なさそうな顔をしながらも私と同じように下を向いていた。ずっと亭主関白でやってきた夫婦。もしここで叔母が何か言ったものなら大騒ぎになる。

その後も叔父はブツブツと何か言っていたが、誰も構わず触れず、そのうち何事もなかった様にまた各自で会話し始めた。叔母は気まずくなったのか、小さな声で「ごめんね」と言って部屋から出て行ってしまった。

この状態で残された私。
本当に嫌になる。

叔父の発言は勿論嫌な言葉であったが、そこに腹が立つというよりは、聞いていた親戚達の反応、視線が心に刺さった。

可哀想に。皆そういう目で見ていた。その方がずっと痛かった。





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Posted byころり
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