パートに負けている上司
今行っているパート先から、ちょっと相談したい事があるからと呼び出しがあった。
何だろう?
分からないが、もしややこしい話なら、これをきっかけに辞められたらいいのだけれど。
職場に行くと、上司が「こっちこっち」と手招きしていた。
他のパート達は私が来る事を聞いていなかったらしく、その上仕事をする訳でもないのに何しに来たの?という顔でこちらを見ていた。
上司はあまり使われていない会議室に私を通し「まぁまぁ座って下さい」と私に椅子を差し出した。
この上司は悪い人ではないが、少し気が弱く、上司でありながら部下に対して強く意見や指示が出来ない。一般社員に対してはもちろん、長年勤めているパート達にさえも気を遣っているのだから、見ていて情けなく、時には可哀想にも見えてくる。
どこにでも居るのだろうが、この会社にもパートという立場でありながら、なぜかその職場のあれこれを仕切りたがるオバサンがいるのだ。
どうしてあんな風に強くなれるのか、周囲もそれに合わせているのか、不思議だが現実。
実際のところ、私もその仕切屋オバサンの顔色ばかり見ている。
「実はですね――」上司は言い辛そうに切り出した。
「他のパートさんに、ころりさんもパートなのにどうして私達と違う仕事をさせるのか?って意見されてしまってね」と苦笑した。
やっぱり。そういう事だったか。
何となく予想はしていたが、実際にこうして聞くと気分が凹む。
確かに私は他のパート達と違い、社員側と同じ仕事を与えられている。それは元々最初は派遣として入った為、その時の仕事の延長でこうなったというのもある。
しかしそれは私が望んだ訳ではないし、指示されたのでやっているだけだ。
そして何より、私がこの職場に行くのは多くても月に数回だ。そんな時々しか会わない人の事まで他のパート達は気になるのかと思うと本当に働くのが嫌になる。
しかし反面、そのパート達の気持ちも分かる。
皆長年勤めているし、自分達のやり方に自信もあるだろう。
それが、突然やってきた女が社員と同じようにパートがやった仕事をチェックするのだから気分が悪いだろう。
私だってこんな役回りは嫌だ。波風立てず、少し手伝いをさせて貰えたらそれで良かったのに。
――続きます。
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