再会





豪雨の日だった。

その日は用があり出掛けた帰りで、私は駅のホームに居た。
外を見るとザーッという強い雨の音がしていて傘は持っていたものの、バス停まで歩くだけでビショ濡れになるだろな、とため息をついた。

仕方ないかと思い切って傘を広げ、ダッと駅から飛び出した。
風が強くて傘まで吹き飛ばされそうだ。

必死に傘を押さえ、小走りにバス停まで向かっていると急に、「ころりさん⁉」と男性の声が聞こえた。雨の音が強くて、一瞬どの方向から呼ばれたのかさえ分からず、立ち止まり辺りをキョロキョロ見渡した。

すると、一人の男性が同じように傘を押さえながら立ち尽くしこちらを見ている。

顔を見てもまだ誰だか気付かず、一瞬見つめ合ったまま間があった後、「あっ!」と私は叫んだ。

「坂井さんっ!」

そう、彼は昔私が派遣で働いていた時にお世話になった男性であった。
10年振りぐらいだろうか。

「ワーッ!お久しぶりです!お元気でしたか⁉」

私にしては珍しく興奮し、懐かしさと嬉しさと少しの戸惑いの中、笑顔で彼に近寄った。


「本当に久しぶりだね。君は元気だった?」

「はい。本当にお会い出来て嬉しいです」と私はあの頃の記憶が蘇り、胸が一杯になった。

豪雨の中で一言二言会話していたが、もう二人共既にビショ濡れだ。
大声で話さないと相手の声も聞き辛い程で、苦笑しながら二人は屋根のある駅の構内まで戻った。

ようやく雨から逃れ、濡れた手足をハンカチで拭きながら近くにあったベンチに腰をかけた。

「あれからどうしてるかずっと気になってたんだよ」と坂井さん。

「私もです」


私が派遣されていたその会社は、いわゆるブラック企業であった。
そして、社員の中でも仕事が出来る人と出来ない人の差が激しく、仕事が出来る人は徹夜でほとんどの仕事を背負い込み、出来ない人は外回りと言いながらどこかで昼寝をしたりサボったりしていた。それが許されるというか放置されている企業であった。

だから、デキル社員だけだとどうしても手が足りなくなり、経験者の派遣が呼ばれる。
突然その状況の企業に放り込まれ、山積みの資料と間違いだらけの過去データを元に、何とか仕事を完成させなくてはいけなかった。

そして、その派遣先に居たのが坂井さんだ。坂井さんは凄くデキル人であった。

私はその頃派遣で複数の会社に勤めたが、派遣先によっては引継ぎどころか相談や指示してくれる相手もおらず、一人で悶々と悩みながら仕事をこなす場合もあったので、今回の派遣先は尊敬出来る上司がいた事で安心した。

――続きます。




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Posted byころり