そんな事を私に聞かれても知る訳ないでしょ!な話

―――前回の続き。
意外な人からスマホに電話がかかってきた。
「わぁ、お元気でしたか?」と私も相手に合わせてテンション高く挨拶をした。
そして互いに近況を軽く話してから、社長姉が言った。
「ころりさんに聞きたい事があって」
「何ですか?」
私がそう聞いても社長姉はハッキリ答えず、「それが…ちょっと電話では話しづらい事なのよ」と。
「え~、何だろう、怖いじゃないですか」と私は笑いながら茶化したが、自分に何か関係がある事なのか…と、本当に怖くなった。
すると社長姉が、「申し訳ないけど、会って話せない?日時は合わせるから。ほんの少しの時間でいいの」と言う。
私は一瞬迷ったが、気付いたら「いいですよ」と答えていた。
怖さ半分、興味半分…そして一番の理由は、誰でもいいから女性と会話したかったのかもしれない。
そして急な話であるが、「では今からでもいいですか?」と、その日に会う事になった。
これは私の方が、ある程度時間が経ってしまうと気が変わって会うのが億劫になるかもしれないし、どんな話の内容なのか何日も気にし続けるのも嫌だったので、会うなら早く会ってしまいたかった。
* * * *
そしてその2時間後、私と社長姉はファミレスで向かい合って座っていた。
働いていた頃には、社長の親族であり気の強い女性でもあったので、会えばいつも緊張したし気も使った。
10年ぶりに再会した今もやはり気は使ったが、今は雇われている関係では無いのと、社長姉も以前より話し方が丸くなっていたのでそれ程緊張もせず気軽に会話をする事が出来た。
「ごめんね、突然呼び出したりして」と社長姉。
そして二人でランチを食べながら、いよいよ社長姉が本題を話し始めた。
それは金銭問題。
私が勤めていた頃の会社は閉業してしまったらしい。
社長は現在働いておらず、親の遺産で暮らしているという。
そこで社長姉が聞きたいのは、私が勤めていた頃、会社には隠し金が無かったか?という話。
どうやら社長と社長姉は財産争いで揉めているらしく、会社の資産も弟である社長が姉に隠しているものがあるのではないか?と疑っているようだった。
そんな事…私が知る訳ないでしょー!なぜ今頃私に聞くの⁉
慌てて私は「全く知りません!」と、そこは強く言った。
金が絡んだ揉め事に巻き込まれては大変だ。
―――続きます。
その後もしばらく、「何でも知っている事があれば些細な事でもいいのよ」としつこく聞かれたが、
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