同じぐらい愛せるのか自信がない

そして夫は言う。
「全然違う。似ている所が一つもない」
それは愛犬と比較して、子犬が似ていないという事を言っている。
最近私はよく夫に言う。「まるで母子家庭みたいよ」
ショップで見た時には姿だけでなく雰囲気なども愛犬と重なって見えた。だが実際のところ、子犬の性格は愛犬とは真逆だし、成長と共に見た目も愛犬とは似ていなくなってきた。
「まさかこんな性格だと思ってもいなかったから」と夫は言う。
そんな会話をする度、いつも私は怒る。
愛犬を求めてはダメだ。
同じ子なんてこの世にいないのだから。
この子にはこの子の良さがあるのだから。
いつまでも愛犬と比較しては可哀想よ!と。
すると夫は、「分かってるよ。だけどころりも思うだろ?前の子の方が可愛いって。前の子が戻ってきて欲しいって」と言われた。
「そんな事言ったらダメ!この子が聞いているよ?今はこの子がうちの子なんだから」
私は夫に強くそう言い、その後も夫が事あるごとに、「似てないなぁ」「良い所が無いなぁ」「前の子の方が可愛かったなぁ」と言うので、その度に興奮しながら怒っている。
だけど…それは本当は自分に怒っているのだと思う。
自分では必死に気持ちを打ち消しているが、私も夫と同じように思う事があるから。
この子を迎えた事に後悔はないし、本当に心から可愛い。
夫はこの子の繊細な性格が苦手なようだが、私はそんな所も含めてこの子に愛情を感じている。
だがその一方で、もう一度愛犬に会いたいという気持ちが強過ぎて、新しく迎える子が愛犬と似て育っていく姿を思い描いていた。
しかしあまりにもこの子は性格が違い過ぎる。
食事を食べさせるのも一苦労だし、未だに壁や家具に近寄る事も出来ない。窓から外を見るのも怖がるし、その一方で噛み癖がかなり酷い。オモチャには興味がなく、この子にとって私だけが全てで私だけを見つめている。
それが嬉しく感じる面もあるが、その何倍も心配で、あぁ…どうして愛犬とこんなに違うんだろう…と思ってしまう。
だがそんな風に思ってしまう自分が情けなく、子犬に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
だから私はそんな気持ちを振り払うように、思いっきり子犬を可愛がる。
自分でも分からない。愛犬と同じぐらいこの子を愛せるのか。
愛犬は私にとって「人間」であり、子供と同じ存在だった。
だがまだこの子犬は私にとって「犬」なのだ。
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