ただそれだけ





久々に心療内科に行った。

今は定期的には通っていないが、時々服用する安定剤がなくなったら貰いに行く程度。
しかしこれは言い訳で、安定剤があろうがなかろうが、時々この医師に無性に会いたくなる。

医師は穏やかでおっとりしている。
病院自体はカウンセリング専門ではないが、この医師と少し会話するだけでなぜか心が落ち着く。なので、本当は心療内科とは縁が切れた方がいいのだろうけど、この医師と縁が切れると思うと少し寂しい。

そんな事もあって、またその心療内科を訪れた。

待合室は相変わらず大勢の人でごった返している。
その日も「待ち時間が2時間程になりますけどいいですか?」と受付で聞かれた。

私は了解し受付を済ませた後、一度病院を出た。
以前からそうだが、心療内科の待合室で心を病んだ他人と一緒に何時間も座っていると、息苦しくなってくるのだ。誰かが悪い訳ではなく、私自身も相手にそんな思いをさせてしまいそうで、待ち時間が長い場合には外に出るようにしている。

予定の時間になり待合室に戻ると幾分人が減り、すぐに私の名前が呼ばれた。

診察室に入ると、「ころりさん、久しぶり!」といつもの笑顔がそこにあった。

主治医はカルテを見ながら、「最近は落ち着いているかな?」と聞く。

私は随分良くなった事。それでも時々不安感が戻ってくる様子などを話した。
続けて、それでも出来れば毎日フルタイムで働きたい事、もっと働かなくてはと焦る事などを話した。

だけど過去の自分を思い返すと自信がなく、この歳でまた失敗を繰り返すと思うとなかなか踏み出せないと言った。


主治医は笑顔のまま下を向き、「うん、うん」と頷く。
目を合わせずに聞いてくれるのも、この主治医の良いところ。

何も言わず一通り話を聞いた主治医は、

「焦る必要はないと思うけど、やってみたいなら仕事を増やしてみたら?」と言った。

「もし毎日外に出て、やっぱり無理だなって思ったら辞めたらいいだけだし」と言う。

「辞めたらいいだけ」

ああ、そう思えたらどんなに楽だろう。
結果的には今まで何度も職場を変わり辞めてきた。今後もそうだろう。
だけどその度に私はダメな人間だと烙印を押された気分になり帰ってくる。

この歳になっても、また親をガッカリさせてしまうと思う自分がいる。

主治医の話を聞きながら、こんな親なら子供は幸せなんだろうな、と想像した。

全ての事を「ただそれだけ」と、いとも簡単に言う。
それを聞いていると、悩んでいるのが無駄な事のようにも思え、どんな事でもどうとでもなる、そんな風に思えてくる。

病室を出る時、主治医は言った。

「焦る必要なんてないよ。何もしなくたっていいんだから。僕なんてここで働いているように見せかけて、実はボーっと座ってみんなの話聞いてるだけで何もしていないしね」

そう言いながらいつもの様に笑った。

やはりこの医師は心療内科にピッタリだと思った。
座って話を聞いてもらうだけで癒されている人がここに居るのだから。




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Posted byころり