絶句する義母と怯える子犬

――前回の続き。
義母からの電話を切った後、ソワソワと落ち着かなかった。
「そうなんです。まだ来たばかりで」
私は子犬を抱いて義父母に見せた。
子犬が来てから他人が家に入るのは初めて。
子犬はブルブルと震えていた。
義母は絶句していた。
口を半開きにしたまま、ジッと子犬を見つめている。
そしてようやく出た言葉。
「どうして飼ったの?またお金がかかるでしょ?いくらだったの?」
子犬を歓迎しない事は予想していたが、まさかお金の話になるとまで予想しておらず、あぁ…義母らしい…と思った。
私は子犬をケージに戻しながら言った。
「二人共寂しくて我慢出来ずに迎えたんですよ」
少し茶化したような口調で言った。
義母のような質問にはまともに対応せず、軽く流す方がいい。
だが義母は明らかに嫌そうな顔をして、「こんな場所に置いて、フンとか汚くないの?」と言った。
ペットと暮らした事のない義母にとって、犬は外で飼うべき動物なのだ。
私はここぞとばかりに言った。
「まだトイレを覚えていないので、あちこちでお漏らししますよ」
それを嫌がり早々に帰ってくれればいいのにと思ったのだが義母は、「嫌だわ~、不潔でしょ、せめて玄関に置いたら?」と言っただけで、そのままソファに腰を下ろした。
え?ゆっくり寛ぐ気?
結局その後も義兄夫婦への愚痴を散々聞かされ、義母はほとんど一人で喋っていた。
その間、私は子犬の事が気になって仕方がない。
ようやく義父母が帰った後、ケージから子犬を出そうとすると、ケージの奥に張り付いて出て来ようとしない。
臆病なこの子が義母の雰囲気に圧倒された?
それにしても義母、私の事が心配だと言っていたはずが、ずっと自分の事を喋っていただけだった。
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