ここが君のおうち

―――前回の続き。
新しい犬のお迎えは、夫の帰宅後に行く予定になっていた。
特に気になったのが関節。
グレードは低いが膝蓋骨脱臼がある。小型犬には多い。
愛犬も膝蓋骨脱臼があった。
それもその箇所は、今回の子犬と全く同じ足だった。
しかしこの程度の疾患はよくある。
ペットショップで売られている子の方がそういう子が多いとも聞くが、ブリーダーにいる子の方が絶対健康とも言えないし、私はある意味最初からこうして正しく教えてくれるショップで良かったと思った。
事前に調べていたのだが、子犬の健康状態の判定は、ショップによってバラバラな様子。
少々軽いものなら「異常なし」と表示してしまうショップもあれば、厳しく診断して「異常あり」で表示するショップもある。
店員に、「ご納得の上、ワンちゃんを迎えてあげて下さいね。もし少しでも気になるようでしたら、今日はご購入頂かなくても結構ですので」と言われ、「大丈夫です」と答えた。
必死に売り込まない店員で、逆に安心感があった。
長い説明と手続きをしている間、夫はやはり眩暈があるらしく、あまり元気が無かった。
ほとんど私にお任せ。
テンションも低く、明るく二人で迎えてあげたかったのに…少し残念だが仕方がない。
そしていよいよ子犬を渡された。
段ボール箱に入れられた子犬。
愛犬を迎えた時から十年以上経ち、ペットショップのサービスや契約内容の変化に驚いたが、この段ボール箱に入れて連れて帰るのは全く同じ。
箱の中でカサコソと動く子犬を見て、十数年前の愛犬と重なった。
「すぐに家族が見つかって良かったね。元気でね、幸せにね」
そう言いながら店員は名残惜しそうに子犬を撫でていた。
そこから私は助手席で段ボール箱を抱いたまま帰宅したのだが、意外にもこの子犬、段ボール箱の中で大人しい。
時々そっと覗いてみたが、中にブランケットを入れてあげたので、その中でスヤスヤ眠っている。
案外手のかからない子なのだろうか。
家に着き、段ボール箱をリビングに置いた。
箱を開けると目をぱっちり開けた子犬がこちらをジッと見つめている。
その小さな子犬に私は言った。
「ここが君のおうちだよ」
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