似てる子

日課のように保護犬やペットショップのサイトを見ている。
また、地元の愛護センターの里親募集などをチェックしたり。
しかし心のどこかで愛犬の面影を探してしまう。
犬種に拘りがある訳でもなく、どの子も可愛いし猫も大好きだ。
愛犬がいる頃には、あの子もこの子も迎えたいという気持ちがあった。
だが愛犬がいなくなった今、どの子も可愛いのに愛犬と同じ犬種にしか目がいかない。
その犬種が好きというより、私達のあの子を探してしまう。
そんな風に私も夫も毎日あらゆるサイトで子犬ばかり見ていた。
そして愛犬に似ている子を見つけては、互いにその画像を見せ合い、「似てるね」と言いながら温かくも切ない気持ちになった。
先日も私は同じ調子でスマホで検索し、何気なく夫にあるサイトの子犬を見せた。
「この子も可愛いよね」
愛犬にそっくりという訳ではないが、どこか恍けた表情に見ているこちらが思わず笑ってしまう。そんな所が愛犬と似ていた。
夫は私のスマホを手に取り、その子犬を見つめた。
だが返事が無い。
「どう?何となく似てるよね?」
私がそう言ってみてもやはり返事が無い。
スマホで夫の顔が隠れていたのでよく見えず、私は体を傾けて夫の顔を覗き込んだ。
すると夫、涙でいっぱい。
言葉が出ない様子。
今までペットショップに出掛けたり、一緒にサイトの子犬を見たりしても、私達は笑顔になる事が多かった。可愛いね、やっぱり犬は癒されるね、そんな気持ちだった。
なので今回のように子犬の写真を見て夫が泣く事は初めてだった。
「大丈夫?」
私がそう言うと、夫が絞り出すように言った。
「…似てる」
私が思う以上に夫にとってはその子犬が愛犬にそっくりらしい。
「そうかなぁ。確かに雰囲気は似てるし可愛いけど、私はそこまで泣く程では…」と私が言いかけると夫がまた言った。
「…似てる」
どうやら夫のツボにハマってしまったらしい。
私達はその子犬に会いに行ってみる事にした。
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