近所の夏祭り
憂鬱だった夏祭りの日。
この地域では毎年夏の終わりにこの夏祭りがある。
今年は役員でもないので、いくら周囲で騒がしくしていても私には無関係だと思おうとしていたが、先日近所の主婦に「来なさいよ」と念を押されて仕方なく参加する事となった。
まだまだ蒸し暑さが残る16時。
近所は全体的にザワザワとし、いつもより道路に出ている人、立ち話している人が多い。
浴衣を着ている子供達が、キャーッ!と笑いながら夏祭り会場の方へ走っていった。
私は誰と会話するでもなく、ただトボトボと重い足取りで会場に向かった。
行って何をすればいいのだろう。
誰に声をかければいいのだろう。
ただ一瞬顔を出してすぐに帰ってしまおうか。
頭の中は逃げたい気持ちでいっぱいだ。
花火会場の手前にくると、屋台の準備をしている主婦や定年後で時間を持て余していたのであろう60代男性達が忙しそうにしていた。
日頃近所付き合いはしていない為に、ほとんどの顔が誰だか分からない。
私が屋台の方に近づいて行くと、何人かの主婦達がチラリとこちらを見て目が合ったが、すぐに視線を逸らされてしまった。
主婦達は楽しそうにケタケタと笑いながら盛り上がっている。
一定の距離までは近づいたものの、その楽しい輪の中に自分から入っていく勇気はなかった。
この感じ。結局私は職場でも近所でも同じだ。
しばらく近くの木の陰に立ち尽くしていた。
今の自分の状況を客観的に外から見ている自分もいて、一人ぼっちでオドオドとしたその光景が情けなく脳裏に映った。
ため息をついていると、見覚えのある顔が前から歩いてきた。同じ班のママ達だ。
二人とも中学生の子供がおり、それぞれの子供を連れて楽しそうにおしゃべりしている。
二人のうち一人は近所ではボス的存在で、私は密かにジャイアンと呼んでいる人だった。
「あれ?ころりさんも来たんだね」とジャイアンママ。
「うん、一応顔だけでも出そうかなって……」
「偉いじゃん。結構来たら楽しいよ。あとで花火もあるしね」
私もママ友や子供などと一緒に参加出来る環境であれば、この状況を楽しいと感じられたのかもしれない。
それでもそのママ二人は、少しは同じ班の者として私に気を遣ってくれたのか、少しの間傍にいてくれた。
しかししばらくすると、更に若いママ集団が向こうの方から歩いてきた。
数年前から新しく建築されているエリアの新顔のママ達だ。
母親が4~5人で、小さい子供達が10人近く足元でキャッキャとはしゃぎながら近づいてくる。
私は最も嫌なシチュエーションになってしまったと、自分でも顔が硬直しているのが分かった。
――――続きます。
しばらく近くの木の陰に立ち尽くしていた。
今の自分の状況を客観的に外から見ている自分もいて、一人ぼっちでオドオドとしたその光景が情けなく脳裏に映った。
ため息をついていると、見覚えのある顔が前から歩いてきた。同じ班のママ達だ。
二人とも中学生の子供がおり、それぞれの子供を連れて楽しそうにおしゃべりしている。
二人のうち一人は近所ではボス的存在で、私は密かにジャイアンと呼んでいる人だった。
「あれ?ころりさんも来たんだね」とジャイアンママ。
「うん、一応顔だけでも出そうかなって……」
「偉いじゃん。結構来たら楽しいよ。あとで花火もあるしね」
私もママ友や子供などと一緒に参加出来る環境であれば、この状況を楽しいと感じられたのかもしれない。
それでもそのママ二人は、少しは同じ班の者として私に気を遣ってくれたのか、少しの間傍にいてくれた。
しかししばらくすると、更に若いママ集団が向こうの方から歩いてきた。
数年前から新しく建築されているエリアの新顔のママ達だ。
母親が4~5人で、小さい子供達が10人近く足元でキャッキャとはしゃぎながら近づいてくる。
私は最も嫌なシチュエーションになってしまったと、自分でも顔が硬直しているのが分かった。
――――続きます。
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