声に出さない「おはよう」と「ただいま」

夫は毎日愛犬の骨壺に話しかける。
朝起きた時には「おはよう」
帰宅した時には「ただいま」
欠かさず毎日。
それは私も同じで、私なんてずっと家に一人でいるものだから、愛犬の写真と目が合う度に「うん」と頷いている。
何の「うん」なのか自分でもよく分からないが、「ずっと一緒だよ」とか、「大丈夫、頑張るよ」とか、「また会えるよ」とか…そんな想い。
ただ夫と私が違うのは、夫は常に声に出して話しかける事。
私にはそれが出来ない。
もうそろそろ出来るかな…と思い、試しに何度かチャレンジしてみた事があるが、愛犬の名前を声に出して呼んだ瞬間、どうしても感情が溢れ過ぎてしまう。涙で声が震える。
声に出すと温かい気持ちよりも辛い気持ちの方が勝ってしまい、どうしても無理。
なので私は夫が愛犬に声を出して話しかけている姿を見ると、夫が私よりも一歩先に立ち直っているように感じる。
声に出しても出さなくても、それが想いや悲しみの量とは無関係だと分かってはいるが、夫が話しかける声を聞くと、愛犬がこの世にいない事を実感して少し切ない。
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