癒されたいだけ

夫が帰宅し、私に言った。
「今日はペットショップに行ってきた」
咄嗟に羨ましかった。
「えぇ⁉一人で?どうして私を誘ってくれなかったの?」
私がそう言うと夫は、「まさかころりが行きたいとは思わなくて」と言う。
私に負けず、夫も現在ペットロスが酷い。
私がこれ程落ち込む事は以前から想像出来ていたが、まさか夫がここまで精神が不安定になるとは予想もしていなかった。
家では私より夫の方がよく泣いている。
何をしていても思い出すようで、辛くて耐えられない様子。
一人で部屋に籠り号泣している時もある。
なので今は夫婦で支え合うというより、私と夫、それぞれが別の場所で一人で泣いている事が多い。
夫は仕事に行くのも負担なようで辛いらしい。
こうなる前は、私も仕事を持っていた方が気が紛れて救いになると思っていた。
だが夫の様子を見ていると、仕事には集中しないといけない、職場では泣けない、でも常に思い出してしまう…という状況がどれ程辛いのかよく分かるし、私ならきっとこの状態で仕事には行けなかったと思う。
そんな夫が、心の持って行き場がなく、思わずペットショップに行ったと言う。
「飼うつもりなんて1mmも無いよ。ただ癒されたかった」
分かる。
「たくさんの犬を見ていたら、心が落ち着いた」
分かる。
夫の話す一言一言が私には痛い程よく分かった。
ペットを亡くし、「今は他の犬や猫を見るのも辛い」と言う人がいるだろう。私も自分はそうなると思っていた。
だが、私は家にいても何にも集中できない。何もする気になれない。
ただ一日中、ペットロスの記事を検索したり、高齢犬のブログを読んだりしている。
気分を変える為に映画を見ようとしてみたが、気付けば動物映画を眺めていた。
私もたくさんの犬を見たい。
動いている姿を見たい。
飼いたいのではない。
ただ犬の温かさを感じたいだけ。
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