大切なのはどっち?

愛犬が亡くなった日、その日は在宅ワークをスタートさせる日であり、初めて打ち合わせに行く予定だった。
私は前日から緊張していた。
ただの在宅ワーク、毎日スタッフ達と関わる訳ではない。
そう何度も言い聞かせたが、初めて電話で話した時から面接、その後の連絡など、まだ少ししか関わっていないのに、その度に荒々しい雰囲気を感じ、ますます緊張感と不安が増した。
だがなかなかこれ程好条件の在宅ワークの求人は無く、それも仕事内容も自分の望む仕事。
定年がなく、長く続けられそうだという点も有難い。
もしスタッフ達と関わる事があるとしても、ごくたまに会う程度だろう。それぐらい気にしない人にならなくては。
私は前日の夜に打ち合わせの準備をし、仕事のブランクがあるのである程度復習したり情報収集をした。
そんな時も愛犬は、「早く寝ようよ」とでも言いたげに私の隣に来てお座りしていた。
そして翌朝、突然愛犬が倒れた。
私は泣きながら動揺していたが、病院への連絡と共に、今日は仕事の打ち合わせの日だという事を忘れてはいなかった。
とても行けない。
どうしよう。
しかしこの日の打ち合わせは、わざわざ私の為に時間を割いて頂くものであり、今後の在宅勤務の方法を具体的に決めていく予定で、会社では私の担当者が決まり、必要書類の準備もしていると聞いていた。
とても忙しい職場で、この時間をとって頂くのも容易でない事は伝わってきた。
なのでかなり断りづらい。
スタッフ全員のミーティングを欠席するとか、ある程度勤続年数が経過していればもう少しは断りやすいが、今回の場合は全く面識のない人達にこの事情を説明しなくてはならない。
しかしその事情は「犬」だ。
―――続きます。
今まで色んな人と会話をする度、何度も「犬で?」と言われてきた。
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