父から渡されたもの

昨年、実父が亡くなった。
体調が悪く入院してからあっという間だった。
両親が離婚してから父とは滅多に会う事が無かったし、父と同居する女性がいると知ってからは気持ち的にも遠のいた。
家族4人で一緒に住んでいた頃も、私達家族は互いに心をさらけ出して会話をする事がなく、一人で感情的になっている母と、それをサラッと聞き流す兄、どこかに行って帰ってこない父、そして母の言葉を真正面から受けとめてしまう私…という4人だった。
父が家を出た時も、まるで「いち抜けた」と言われたような気分だった。
だが母の過干渉が強烈過ぎて、父の事を恨むとか恋しがるとか私にそんな余裕はなく、父の事は何というか…親戚のおじさん?ぐらいの距離感だったように思う。
そのせいか、父の病状が悪く余命は長くないと聞かされた時も私は冷静で、本当に何も感じなかった。
昔飼っていた猫の命が助からないと聞いた時の方が余程号泣し、悲しんだように思う。
そして父が亡くなる数日前、まだ意識があった父が病室で私に封筒を渡した。
真っ白な封筒でしっかり糊付けされていたので、その場で中は確認出来なかった。
「何?」
私が聞くと父は、「帰ってから見て」と言っただけだった。
帰宅後、その封筒を開けてみると、そこには私への手紙が入っていた。
――続きます。
父から手紙を貰ったのなんて生まれて初めて。
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