無表情だけど温かさを感じる人

―――前回の続き。
少し前に美容室が苦手だという記事を書いた。
電話をしてみるとまず受付らしき人が出て、その後でトリマーに電話を代わった。
全身トリミングではなく部分的にお願いしたい事を伝えると、慣れた様子で料金説明をされた。事務的で淡々としているものの、声のトーンが落ち着いていて、「この人が担当ならいいな」となぜか思った。
そして早速ホームセンターの奥にあるそのペットショップに行った。
今までのトリミングサロンでは、早くても一週間後以降しか予約が出来なかったが、今回は当日でもOKという事でその点でも助かる。
ショップの受付で声をかけると、奥から一人のトリマーが出てきた。
少し会話をすると、先ほど電話で対応してくれた女性だと分かった。
直接会ってみてもやはり淡々としていて、笑顔が一切ない。だが不思議な事に嫌な感じではなく、むしろホッとした。なぜだろう。
今回は爪切りや耳掃除など、すぐに終わる簡単な事をお願いした。
そして私はやや離れたところから、その様子を観察した。ホームセンターなので気兼ねなくその場にいられるのがいい。
するとそのトリマーが上手い。
うちの愛犬はトリミングが苦手で暴れる為、大抵のトリマーは口輪をする。
自宅でお手入れをする時には私自身も口輪を使うぐらいなので、手早く済ませる為には仕方がないと思っていた。
しかし珍しくこのトリマーが口輪を使わずとも手際よく作業し、さらに終わった後を見ても仕上がりが今までのトリマーより丁寧で綺麗だった。
私はこれからもこの人にお願いしたい…と思った。
だがこのようなチェーン店の場合、誰が担当するか分からず、さらにこのトリマーがいつ辞めてしまうか分からない。
それでもとりあえず次回もこのショップでお願いしようと思い、「老犬だけど毛のカットもお願い出来そうですか?」と相談してみた。
老犬である為、長時間のトリミングは無理なのだ。
するとそのトリマーは相変わらず淡々とした口調だったが、「シャンプーも無しで、飼い主さんがカットするのが難しい箇所だけやってみましょう」と言い、私の愛犬をそっと撫でた。
そして私の愛犬に「頑張ろうね」と言い笑った。
その口調や表情が優しく、人に対してはあれ程無表情なのに、犬に対してはこんなに温かさを感じる人なんだと思うと、私はとても嬉しくなった。
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