私は親の介護ヘルパーになるつもりはない

夕方、自宅の前の道路に打ち水をした。
熱気と道路の匂いを感じ、夏だなぁ…とボンヤリしていると、見知った顔が通り過ぎようとした。
いつも犬の散歩で会っていた主婦だ。
今日も大型犬を連れて散歩していた。
私はこの暑さになってからはほとんど散歩に行っていないので、見かけたのは久しぶり。
あちらも気付き、私の家の方に近付いてきた。
彼女は近所では数少ない子なし主婦だ。
散歩で会う度、何年かかけて少しずつ会話をするようになり、その事を互いに知った。
やはり彼女も近所付き合いはほとんどしていない様だが、それを全く気にしていない。
フルタイムで長年仕事を続けていたらしいが、少し前にそれも退職し、今は家で専業主婦をしていると言う。
ほぼ私と同じ環境なのに、彼女はいつも元気で明るい。
今日は彼女に聞かれた。
「お盆はどこかに行きました?」
私は、「コロナもあるし、老犬もいるし、どこにも行っていないです。それぞれの親の家ぐらい」と答えた。
すると彼女は、「え~、勿体ない、どこかに遊びに行けばいいのに」と言った。
その時気付いたが、彼女はマスクもしていなかった。コロナの事をあまり気にしていない様子。彼女は夫と旅行に出かけたらしい。
逆に私は聞いた。
「お二人の実家に帰らなくていいのですか?」
聞きながら気付いた。今年はコロナ渦で帰省を控える人が多い。高齢の親を思って帰らないのかもしれない。
だが彼女の返事は違った。
「正月もお盆も何年も帰っていないですよ、どちらも実家も。面倒だし」
…正直だな、と思った。
そして全く罪悪感もなさそうだった。
親の年齢を聞くと、私の義父母と同年代。
車に乗れないという点も同じ為、通院や買い物で困る時はどうしているのかと聞くと、
「タクシーがあるんだからどこにでも一人で行けますよ。私は親の介護ヘルパーになるつもりはないです」
と言って彼女は笑った。
何だか圧倒されて言葉が出なかった。
ここまで自分の意志に自信が持てれば、明るく楽しく生きられるのか。
私もそう割り切れれば楽になれるのだろうか。
よく読まれている記事