子供はいないけど子供好きな人

――前回の続き(▶近所に馴染めないのは子なし主婦あるある?)
「最近家にいても騒がしくて」
その女性が言った。
「どうかしたんですか?」
私が聞くと彼女が言った。
「最近、近所の子供達がうちに集まってきて遊んで帰るんです」
私は固まった。
どういう事だろう?近所の子供が家に来る?
相変わらずその女性には子供がいないようだし、私と同年代なのでこの先も子供が出来る事は無さそう。
子供とは接点があり得ないはずなのに、どうして家に子供が集まってくるのだろう。
だが聞いていると、毎日のように子供達が彼女の家のインターフォンを鳴らし、「遊ぼう!」と言われるらしい。
そして近所の数人の子供達が彼女と一緒に、庭や家の中で遊ぶと言う。
「何をして遊ぶのですか?」
私には想像が出来なかった。子なし主婦は子供の相手が苦手だと思い込んでいた。
「テレビを見たりゲームをしたり…一緒にお菓子を作ったりとか。特に何もしないで喋ってる事も多いし」
そう彼女は言い、「とにかくうるさくって!あの子達が来ると家事なんてやってる暇がないし、毎日うちに来るのが当たり前みたいになってるんですよ」と笑い、とても楽しそうに見えた。
「そもそも何がきっかけでそうなったのですか?」
私は気になった。子なし主婦に子供が近寄ってくる事はない。
だが彼女の説明によると、最初は彼女の愛犬に子供達が近寄ってきたらしい。
そこで犬を通して会話しているうちに、「家はここ?」「中に入ってもいい?」となり、現在に至ると。
「その子達の母親はどうしているんですか?」と私は聞いた。
最初は彼女も母親達に気を使い、自分の家の中に勝手に他人の子供を入れる訳にもいかず、「お母さんに聞いてきて」と子供達を追い返していたそう。
だがそのうち母親達からも、「いつも遊んでもらって助かっています」と言われるようになり、今では「ごめんね~、いつもありがとー」と気さくに声をかけられると言う。
様子を聞いていると、ママ集団の仲間に入るとまではいかないが、その地域にすっかり馴染んでいるように見えた。
子供はいないけど話しやすく子供好きな女性。
そういう立ち位置が出来ている。
私は取り残されたような気分になった。そして子供がいなくてもこういう生き方が出来るという見本を見たような気がした。
出来れば私もそうなりたいが、性格的にとても無理だし、そもそも子供が苦手だ。
だが近所に馴染めないのは、子供がいない事だけが理由では無いと思い知らされた気分だった。
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