手作りマスクを差し上げますと言われたら

一昨日、退職した職場の人から電話があったと思えば、また今日も久しぶりの人から電話があった。
親か夫以外の人から電話が続くなんて、私にとっては珍しい。
その久しぶりの人とは美智子さん。
美智子さんは心療内科で出会った女性だが、宗教活動をされていて勧められた事もある為、徐々に距離を取るようになった。
スマホが鳴っている音がした。咄嗟に義母かと思い、ドキッとした。いつ電話があるかと毎日ビクビクしている。..
最後に会ったのは冬だったか…。
私が電話に出ると、「お久しぶりです」と相変わらず穏やかな声が聞こえた。
話し方もしっかりしていて、前回会った時には調子が悪そうだったが、どうやら今は元気な様子。
となると…また宗教の勧誘ではないか?と私は構えた。
そして美智子さんが言った。
「ところでころりさん、マスク足りていますか?」
唐突にそう言われ、「なぜですか?」と聞き返した。
何か裏があるのではないか…と、まだ私は勧誘の事を疑っていた。
がどうやら勧誘などではなく、「よければ私が作っているマスクをお配りしますよ?」という話だった。
美智子さんは趣味でハンドメイドをしており、コロナで騒ぎになってから、マスクを大量に作っているらしい。それを周囲の人達に配っていると言う。
「ころりさんにも、マスクが不足していたらお渡ししたいと思って」
「あ、ありがとうございます、でも足りていますので」
私は迷わずお断りした。
本当にマスクに困っていないし、正直なところそんな手作りを受け取ってしまうと、後々気を使うのが面倒だった。
だが美智子さんはさらに続けて、
「たくさんあるんです。よければご自宅の近くまで行きますよ?」と言った。
さらにさらに、
「ついでにお茶でも」と言われた。
さすがに私は、「でも今、外出自粛ですしね」と苦笑しつつ言ったが、美智子さんが私とお茶する事に全く問題を感じていない事に驚いた。
コロナウイルス対策のマスクを手渡す為に、カフェでお茶するなんて本末転倒な気がする。
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