波に呑まれる夫婦

ダイニングテーブルの上はまだ、領収証や家計簿の資料を放置したまま。
一度片付けるとまた手を付けるのが嫌になりそうだし、ここは一気に片付けてしまいたいところ。
だがこんな日に限って夫が代休を取り朝から休みらしい。…聞いていなかった。
夫がいると確定申告どころではなく、朝ご飯が終わり片付けたかと思えばすぐに昼食。まるで私は家政婦のようになる。
さすがにダイニングテーブルの上を片付けようかと思ったが、私の性格を知る夫が、「片付けたらまた先に延びるでしょ」と言い、小さなサイドテーブルの上で食事を食べていた。
そして食事の後、私は先日から思っていた事を夫に言ってみた。
「ねぇ、新聞取るの、やめてもいい?」
そう、私はまだウジウジと新聞を取るのをやめるかどうか悩んでいたのだ。
ここ数日、家計簿をつけている。数...
これも近所付き合いの一部なんだから、断れる訳がないと思う反面、そこまで気にする必要がある?と思う自分もいて、毎日気持ちが入れ替わる。
そして今日は強気モードの日だったのか、「よし、新聞をやめよう!」と思い立ち、夫にそれを言ってみた。
きっと夫は「好きにすれば」と言うだろう。いつも新聞を開かずそのまま捨てているのは夫も知っている。
だが意外な事に、夫は渋い顔をした。
「うーん…どうして?」
「え?だって無駄でしょ。二人共読んでいないし捨てているだけよ?」
「でも、時々読みたくなった時に無いと困るよ」
「時々っていつ?全く読んでいないじゃない。また欲しくなった時に取ればいいでしょ」
「その時になって、やっぱり欲しくなりましたって言える?それは近所から嫌われるだけだろ」
―――夫は色々と言い訳をしていたが、話を聞いていると結局近所の事を気にしているようだった。
近所付き合いなんて、ほとんどが女性の問題。
留守がちな夫には関係がない…以前はそう思っていたが、この地域ではそうとも言い切れず、男性同士の付き合いも深い。
近所での飲み会や男性だけの旅行やイベントもあり、夫は辟易している。
そんな中、妻がまた近所付き合いに波を立てるような事を言い出した…夫にとってはそんな感じだろう。
「ここから引っ越し出来ないんだから、無難にしておこうよ」
夫はそう言った。
夫もすっかりこの地域の波に呑まれている。
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