過去の栄光は過去のこと

久々に仕事の日。
職場に行くと、見慣れないおじさんがいた。
年齢は明らかに60歳は超えていそう。
だがデスクでカチャカチャとパソコンを入力している様子は慣れていて、ずっと以前からその席にいたかのように馴染んでいる。
隣にいたパートに聞くと、最近入社した契約社員らしい。
と言ってもあの様子ではかなりの経験者だろう。
するとその60代男性は突然立ち上がり、気後れする事なく社員達の席に近付き、次々と質問したり意見している。
なんだか…あまり関わりたくない雰囲気。
と思っていたところにいつもの上司が私に言った。
「ころりさん、ちょっと新藤さんに説明してもらえますか?」
うわっ、最悪。またこんな役回り⁉その60代男性は新藤さんというらしい。
多分、社員達は度々手を止められるのは困るだろうし、他のパート達は社員の仕事に関わらない人が多く、どこにも属さない私にこういった面倒を頼みやすいのだろう。
「はぁ…」
私は中途半端な返事をし、その新藤さんの隣に座った。
どこから何を説明すれば良いのか…さっぱり分からない。
「あの…どのような質問でしょうか?」
するとその新藤さん、そこから私が返事をする隙もないぐらい、喋り続けた。
「私は分からない訳ではないんです。ただね、この会社の方針がちょっと私の経験してきた事と違いがありましてね」
というような内容の話が始まり、具体的な仕事の進め方、処理の仕方に納得出来ないと熱く語り始めた。
本当に私が返事をする隙が全く無い為、私はただ頷き話を聞いている態度をしたが、頭の中は「困ったおじさんに捕まっちゃったなぁ」という気持ちでいっぱい。
それから私が自分の席に戻っても、10分おきぐらいに新藤さんは私の所にやってきて、「これどう思いますか?違うと思いませんか?」と言いに来る。そして自分が今までやってきた仕事ではああだった、こうだった、と説明が長い!
60歳を超えて経験者雇用された人って…こんな感じなの?
過去の栄光で自信に満ち溢れ、自分が正解だと疑わない。
「教えて下さい」とは絶対に言わず、「私の考えと違うのですが」という聞き方をする。
あぁ、自分ももしその年齢まで働いていたら、こんな感じになるのかな…と思うと嫌になる。
だがそれは無いか。今でも既に社会からフェードアウト気味なのだから。
引き際が大切、そんな言葉が浮かんだ。
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