気持ちが分かるからこそ言葉が出ない

最近手の震えがなかなか治まらず、漠然とした不安を感じると必ず手が震える。
そしてその震える手を見て不安になる。
少し前から強い安定剤に変更したが、それによって症状が改善するというより、ただ眠くなるので眠っている間は震えない…ただそれだけ。
今の医師は可もなく不可もなくといった感じの人で、淡々としている。
なので私は時々、閉院してしまった以前の医師の言葉を思い出し、自分を落ち着かせる。
焦らなくていい。
ずっと同じ日は続かない。
自分にそう言い聞かせ、また今日も心療内科に行った。
淡々とした会話が5分程度で済み、薬を処方してもらって終わり。
私が待合で会計を待っていると、久しぶりに美智子さんと会った。
以前心療内科で出会った女性。
昨年の秋頃に会って以来、連絡が途絶えていた。
「近くに来ているのでお茶しませんか?」美智子さんからラインが来た。...
彼女はかなり頻繁に通院しているようなので、またいつか病院で会うだろうと思っていたが、最近顔を見かける事は無かった。
そして久々に見た彼女の顔は太っていた。というより浮腫んでいるのか。
「お久しぶりですね」
美智子さんが私の隣に座ったので軽く会話したのだが、何だか以前と様子が違う。
ボーっとしていて、反応が鈍い感じ。
かなり強い薬を飲んでいるな…そんな印象。
とはいえ会話は出来るので話を聞いていると、しばらく入院していたと言う。
どんな病院かは聞かなかったが、言わないからこそ想像はつく。
「そうですか。今は退院されたんですね」と私が言うと、美智子さんは言った。
「病院に戻りたいんです。家にいると落ち着かなくて」
私から見ても凄く不安定に見えた。
だが私には何も言えなかった。
「焦らないで」
そう言おうかと思ったが、口に出すと薄っぺらい気がして言えなかった。
気持ちが分かるからこそ言葉が出ない。
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