マスクを手に入れた時点で問題解決?

義実家に行くと、義母が私に言った。
「ころりさん、マスクを早く買わないと無くなるらしいわよ。買ってきてもらえない?」
そう言う義母が今までマスクをしている姿を見た事が無い。
マスクが嫌いなのか、どこに行く時もマスクはしない人だ。
そんな義母でも今回の新型コロナウイルスのニュースを聞いて不安なのか、マスクが必要だと言い出した。
「家に全くマスクが無いんですか?」と聞くと、義母は目の前にマスクの箱を置いた。
50枚入りの箱だが、中を開けて見るとほとんど残っている。
「え?あるじゃないですか。これだけあれば十分では?」
私がそう言うと、義母は言った。
「こんなのお父さんと毎日使ったらあっという間に無くなるわよ」
そうか…どうやら今回の件で、義母は毎日マスクで予防したい人に変わったようだ。
それで私は帰り道、ドラッグストアに寄ってみた。
するとやはりマスク売り場はごっそりとその箇所だけ空の状態だったのだが、何とラッキーな事に、一箱だけポツンと残っていた。50枚入りの箱だ。
なぜ売れ残っているのだろう。違和感があったが、売り場にあるという事は買っていいのよね…と思い私はカゴに入れた。
するとその直後に子連れの女性が私の横に立った。
そして言った。
「あー!やっぱりここも売り切れね!」
どうやらマスクを買いに来た様子。
すると手を引かれていた子供が言った。
「どこに行っても無いの?どうするの?」
私は自分が腕に抱えているカゴが異常に重く感じた。気まずい…。私のカゴに彼女達が求めるマスクが入っている。
「あの…これ、良かったらどうぞ」
そう喉まで出かかったが言えなかった。
マスクが欲しかったというより、咄嗟に声をかける勇気が無かった。
そうして手に入れたマスクを翌日、義母に届けると、義母は満足したようにマスクの箱を押入れに入れた。
「使わないんですか?」
義母の様子を見ていると、マスクを使いそうな気配を感じなかったのでそう聞いた。すると義母は、
「いざという時の為のお守りよ」と言った。
何だかマスクが家にあるという事だけで満足しているように見えた。
こんな事ならあの親子にマスクを譲れば良かった…今更ながら後悔している。
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