飲み会が好きになる年齢

パート先の休憩中、皆が上司の噂をしていた。
「とにかくケチよね」
「部下に奢るっていう発想が無いのよ」
その噂されていた上司は度々皆からケチだと言われている。
確かに他の上司や過去にいた人は、部下に食事を奢ったり、お土産を買ってきてくれたり、飲み会に誘ってくれたり…という人が多かったようだ。
それに比べて噂の上司は一切そういう事をしない。
財布の紐が固すぎると皆(特にパート女性)から嫌われていた。
私はその話を聞いていて、私は奢ってくれない方が余程気楽だけど…と思った。
土産程度ならまだいいが、飲み会や食事なんて誘われたら憂鬱でしかない。
これも仕事のうちだと思うと断るに断れず、気を遣い疲れるだけ。
私は帰宅後、夫にこの話をし、質問した。
「あなたは部下に食事を奢りたいと思う事があるの?」
年齢的にも夫は奢る側になる事が多いが、夫も私と同じタイプで、仕事以外での付き合いは極力避けたいだろうと思った。お金の問題ではなく、ただドライな関係でいたいだろうと。
しかし夫は言った。
「そうだね。喜んでくれる人なら嬉しくて食事に連れて行きたくなるよ」
…意外だった。
「でもあなたって、上司や同僚から食事に誘われたらいつも嫌がっていたでしょう?」と私は言った。
つい何年か前までは、会社の誰であれ、食事や飲み会に誘われる度に嫌な顔をしていた。
それがいつの間にか自分から誘いたい人に変わっていたなんて。
「上司に誘われて相手は嫌かもしれないわよ」と私が言うと、夫は言った。
「そういう部下って愛想が無くて寂しいよね」
…まさに私がそういう部下だ。
しかし夫がここまで変わるなんて。
「あなたも歳を取ったのね」
夫と私の一致した意見がそれだった。
あれだけ嫌だった飲み会も、歳を取ってくると皆で集まってワイワイするのが恋しくなってくると言う。
その上相手が嬉しそうに飲み食いしてくれるのなら、どれだけでも奢ってあげたくなるらしい。
こうして書いていると、夫は老後、詐欺に引っ掛かりやすいタイプのような気がしてきた。
人は変わっていくものなんだな…と思ったものの、私の方はこの先も飲み会に行きたくなる自分を想像出来ないけれど。
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