告白
―――前回の続き。
「しばらく連絡出来なくてごめんなさい」
彼女からのメールは謝罪から始まり、そして予想もしていなかった事実が書かれていた。
「実は少し前から体調が悪くて、病院で検査を受けたところ、白血病だと分かりました。今後は骨髄移植があり、治療に専念しなければならないので、こうしてメールのやり取りをするのは難しいと思います。」
そして、
「今まで本当にありがとう。会う事はなかったけど、女性の話し相手が出来て嬉しかったです。こんな終わり方でごめんなさい」
と書かれていた。
私は全く想像もしていなかった内容だっただけに、咄嗟に「本当だろうか?」と思った。
どこまで捻くれた人間なんだと我ながら思うが、もしかして彼女はとても真面目で、私とのメール交換が負担だけど何か理由を付けて終わらせないと、そのまま放置するのが辛かったのかも、そんな可能性も考えた。
本当なのか半信半疑だったが、とにかく返信しなければ。
突然の事でとても驚いた事、もし何か助けが必要な事があれば、遠慮なく言って欲しい事などを書いた。
私など出る幕ではない事は分かっていたが、以前からの交流の中で彼女が夫や実家の家族と上手くいっていない事は聞いていた。なのでもし本当に闘病するのであれば、誰が彼女の支えになるのか……それが気掛かりだった。
すると、また彼女から返信がきた。
一度目の文面とは違い、今度はもっと詳しく病状が書かれており、彼女にしては珍しく一人きりで病気と闘わなければならない事への弱音も書かれていた。
どうやら夫や親にも甘えられないらしい。それどころか、驚いた事に夫は彼女が病気になってしまった事に対し、「お金がかかる」と言って機嫌が悪いというのだ。そして彼女はそんな夫に不満を感じるでもなく、本当に夫に申し訳ないと繰り返していた。
メールを読みながら私は、彼女が本当に病気である事を確信しつつあった。
会った事はないし、実際会うとなればどんな顔して会えばいいのか分からないが、すぐ近くに住む彼女が一人で相談相手もいなくて落ち込んでいる、そう思うと何か力になりたかった。
だがそれが押し付けになり、彼女の負担になってはいけない。私が逆の立場であってもメル友に何か頼むなんてあり得ないだろう。
そう迷いながらも、次のメールで「本当に何か私に出来れば……」という内容をやんわり伝えた。
しかし、やはり彼女は「迷惑がられても親や夫に頼るしかないです」と言い、最後に「本当に色々ありがとう。さようなら、お元気で」と締めくくられていた。
これが彼女の最後のメールだった。
その後彼女は、私達が最初に出会ったコミュニティサイトからも退会したらしく、彼女の名前は削除されていた為、私は彼女に連絡するすべを失った。
しかし私はその後も心がざわつき、彼女の事が気になって仕方なかった。
そして思い出した。
彼女は確か、ブログをやっていたはずだ。
チラリと聞いた事はあったが、それまで見たことはなかった。どちらかというと私達はリアル友に近い関係だった為、彼女は見られたくないだろうと思い、私もあえて詳しいサイト名などは聞いた事がなかった。
だがこうなった今、もしかしてそのブログで彼女の近況が分かるかもしれない、そう思うと覗かずにはいられなかった。
そうして、いくつかの情報をもとに検索すると彼女のブログは簡単に見つかった。
―――続きます。(→祈り)
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