疑似友情
以前、今以上に引きこもっていた頃、ネット上で知り合った方がいた。
知り合ったのはいわゆる出会い系サイトであるが、大手が運営しているコミュニティであり、怪しい出会い目的ばかりでなく、趣味や好みが共通する友人を求めて登録している人も多くいた。
その頃の私は日々孤独感が酷くなる一方で、誰でもいいから友人と呼べる人と話したいと焦っていた。
リアルな友人を求めていた為、そのコミュニティサイトで地域を絞り込み、同じ地域に住んでいる女性でなおかつ同世代、環境の似ている人を探した。
すると一人、該当する人がいた。
「結婚していますが子供はいません。仕事もしていない為に毎日話し相手がいなくて友人になってくれる人を探しています。」
と、友人募集欄に書かれていた。どんな性格の人か全く分からないが、私は思い切ってメールをする事にした。
彼女はとてもサッパリした女性であった。
私と同じように、友人もおらず話すのは夫のみ。日々の生活は私と似ていたが、彼女はそれを気にしている風でもなく淡々と毎日を過ごしていた。
私達は週に1、2回、メール交換をするようになった。
内容は主に情報交換。
「この病院がいいよ」とか、「私はあそこのスーパーで買い物をしている」など。
夫や両親との関係や、ちょっとした日々の出来事なども時々書いた。
だがお互いに日々の悩みや気持ちを語る事はなかった。
そのあたりがこういったブログとは違い、近所に住むリアルな相手という事で、結局あたりさわりのない話題を選んでしまう。
それでも私は結構そのやりとりを気に入っていた。
正直、繋がっている相手なら誰でもよかったのかもしれないが、何もない日々、彼女からのメールが私の中の小さな出来事であったから。
その疑似友情のような関係は1年近く続いた。
しかしお互い、一度も「会いましょう」と言うことはなかった。
その距離感が私には心地よく、安心できる関係であった。
しかしある日、彼女からの連絡がしばらく途絶えた。
2週間ほど空く事は度々あったが、1か月近く連絡がないのは初めてだ。
もう私とのやり取りに飽きてしまったのかもしれない。
特に意味のない会話だったし、もう終わりにしたかったのだろう、私はそう思っていた。
すると、1か月以上過ぎたある日、久々に彼女からメールがきた。
―――続きます。(→告白)
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