犬との暮らし。思わず涙してしまった日

最近、日が落ちるのが早くなった。
今日も明るいうちに行かなくては…と思い、16時頃に慌てて愛犬を連れて外に出た。
歩き慣れた道を散歩していると、向こうから女性が歩いてきて私の愛犬の名前を呼ばれた。
その女性は帽子とマスク姿だった為に一瞬誰だか分からなかったが、近寄って挨拶するとよく散歩中に会う60代の主婦だと分かった。
その人も犬を飼っており、うちの犬と同じ年齢なので散歩では長い付き合いだ。
最近では互いの犬の健康を気遣い、元気そうな姿を見ると「元気そうで良かった」と互いに言っていた。
しかしこの日、その女性は一人で歩いていた。
彼女の犬の名前はシロ。
「今日はシロちゃんは?」
嫌な予感がしつつも、私はやんわりした口調で聞いた。
するとその女性が言った。
「ついにね、虹の橋を渡ったのよ」
……。
自分でも想像以上に胸に突き刺さった。
少し予想していた事だし、最近では散歩で会う犬が次々と亡くなっていく。
だが今日、その言葉を聞いた時、私の感情は大きく揺さぶられた。
「辛いですね…」そう言うのが精一杯。
するとその女性は、穏やかな笑顔で愛犬への想いを語り始めた。
「まだ全然実感がないの。毛布を見ればそこに寝ている気がするし、玄関を開ければ走って来そうな気がするわ」
うんうん、分かる。
「寝る前にはシロが鳴く声が聞こえる気がするし、朝起きたら、亡くなったのは夢でまだ本当は生きているような気がしたり。完全にペットロスよ」
そう言ってその女性は笑ったが、私は我慢出来ず涙ぐんでしまった。
あまりにもその気持ちが分かり過ぎる。
私が、「すみません、聞いているだけで泣けてしまって」と言いつつ涙を拭うと、その女性も泣いていた。
私と愛犬、そしてその女性の二人と一匹が、しばらく無言で夕日に照らされた。
犬との暮らし。
一日一日を大切にしなくてはと思う。
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