一人になるのが不安なのは私だけではない

検診から帰宅すると、夫がリビングで硬い表情をして座っていた。
「ただいま。すぐご飯作るね」
私がそう言うと、夫は怒ったような口調で言った。
「いいから!ちょっとここに座りなよ!」
と、ソファを指差した。
なぜ機嫌が悪いのか分からないが、私は言われるがままソファに座った。
すると夫、
「それで?結果はどうだったの?」と心配そうな顔をして私に聞く。
その顔は心配…というのを通り越して、追い詰められたような表情だった。
「え?そんなに心配してくれてたの?ごめん。また経過観察だったわ」と、私が軽く言うと、夫は大きなため息をつき、「どれだけ心配したと思ってるんだ!」と怒った。
どうやら予定よりかなり帰宅が遅かった為、何か結果が良くなかったのではないかと心配していたらしい。
それも途中で私が連絡を入れなかった為、一人でいらぬ事ばかり想像してしまったらしく…。
夫は心底ホッとしたような表情をしていたが、「とにかく健康に気を付けて」と言われた。
と言われても、乳がんばかりはどう気を付ければよいのか分からないが。
しかしこの日、リビングで一人表情を硬くしている夫を見て、私は何とも言えない気持ちになった。
どれ程不安だっただろうと。
夫が私を愛しているとか、大切にしているとか、そういう事ではない。
一人残されるかもしれない不安、それが強く伝わってきた。
今まで互いにそんな事を感じた事は無かった。
それもただの検診だ。以前なら少し心配したものの、「多分大丈夫でしょ」と、夫も笑っていた。
だが今回の夫の表情には孤独とか、老いるとか、そういったものが色々現れていたように思う。
一人になるのが不安なのは私だけではない。夫も同じ。
年齢と共に、「相方がいなくなるのが怖い」という不安が膨らむのは一緒だ。
この日私は夫を一人にしない為にも健康でいなくては…と思った。
そんな風に感じたのは初めてかもしれない。
今までは自分が一人になりたくない事ばかり考えていたから。
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