嘘をつくから嫌われたまま

久々にパートに出勤した。
最近では会社に行ってもほとんどする仕事が無い為、出勤というより在宅で仕上げた仕事の納品の為に行っているようなもの。
今回も出勤途中、頭に浮かんだのはあの50代の新人パートの事。
久々にパート先に出勤した。前回の出勤日から日数が経ち過ぎてしまい、この時期どんな洋服を選べば良いのかしばらく悩んだ。...
まだいるのかな…いや、あの人ならきっと続いているだろう…。
そんな事を想像しながら出勤すると、その人はいなかった。
他のパートに聞くと、「あぁ、あの人、急に辞めたのよ」と言う。
そうか、遂に辞めたのか。
ホッとしたような、残念なような複雑な気持ち。
あんな風に周囲と馴染めていない人が近くにいると、自分だけが孤独じゃない…と慰められる思いもあったし、逆に、それでも頑張っている彼女を見る度、家に引きこもっている自分が劣等感でいっぱいになった。
彼女の退職理由は、「家族の介護」だそうだ。
親の体調が悪くなり、介護をする為に辞めますと言い、何とその日に辞めたと言う。
さすがにそれは驚いた。
私にその時の様子を話してくれたそのパートは、「誰も介護だなんて信じていないわよ。だって介護が理由で辞表を出した日に辞めるなんて変でしょ?」と言っていた。
確かに私もそう思う。
というか、今までの彼女の様子を見ていても、それは明らかに辞める為の口実…嘘だろうと思った。
あれ程居心地が悪そうで、居場所が無い様子だったのだから無理もない。
私だって過去に仕事を退職した本当の理由は全て人間関係だったが、一つとしてその理由を伝えた事は無い。いつも何か適当な嘘を並べていた。
それが互いの為だとも思った。
人間関係で辞めたいのに、これ以上その関係を複雑にしたくない。
だがこの日話したパートの女性は言った。
「辞める時ぐらい正直に思う事を言えばいいのにね」
それは言える人だから言える事。私は言った。
「でも無難な理由を言った方が辞めやすいと思ったのかも…」
するとそのパート女性が言った。
「本当に思っている事を言わないと、ずっと誤解されたままで辞める事になるでしょ?だから嫌われたままなのよ」
――何だか刺さった。まるで自分が言われているような気持ちになった。
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