義母の頼みを拒否した
今までなら一日もあれば治っていた。
下痢が伴う腹痛は、ある程度出てしまえば消える事が多かった…なのに。今回は様子が違う。
昨日のように冷や汗をかきながらトイレに閉じ籠る程ではない。
だが今日も朝から胃腸の様子が変だった。
腸がキュルキュルと鳴り、腹が何とも言えず重い。まだ昨日の下痢を引きずっているような感じ。
以前実家の母が同じ症状になり、治るまで一週間ぐらいかかっていた。
私もこうして年齢と共に治りが遅くなっていくのだろうか。
病院に行く程でもなく、検査などを想像すると家で温めて寝ている方がマシだと思った。
今日も朝から電気毛布が放せず、足を温めていると電話が鳴った。
義母からだ。
「ころりさん、私昨日の夜から体調が悪いのよ。お願い出来る?」
どうやら義母も昨夜から調子が悪く、眩暈と吐き気がするらしい。
だがこれが初めてではなく、今までも何度もあった。
「薬は?以前から貰っているお薬がありましたよね?」
「飲んでみたわ。だけどまだむかつきが治まらないから病院に行った方がいいと思って」
だがさすがに今日の私は付き添う自信が無かった。その気力が無かった。
私は昨日からの体調不良を義母に説明し、タクシーで行くように頼んだ。
「お義父さんに付き添ってもらえば…」
そう言ってみたが、今まで長い間長男の嫁にそれらの事を頼んできた義母は、年老いた夫が付添だと不安らしい。もちろん一人でなどとても無理だと言う。
なので私は仕方なく、義妹に頼めないのかと聞いてみた。
「恵さんにお願い出来ませんか?」
すると義母は、
「ころりさん!あの子は本家の嫁なのよ?そんな常識外れな事出来る訳ないでしょ!」と興奮した。
ではこのように体調の悪い私に頼む事は常識なのか?
話しているうちに私は義母を心配する気持ちが失せた。
これだけ話せているではないか。本当に吐き気や眩暈が酷ければこんな長話は出来ないだろう。
「とにかく今日は私は無理です。本当にお腹が痛いんです」
「それならころりさんも一緒に病院に行って診て貰えばいいじゃない」
こうして文字にしてみると互いに子供じみている。
私も昨日のようなトイレに閉じ籠りという状態ではない為、無理して行こうと思えば行けた。だけどここで行ってしまうと負けたような気がした。私は無理だと言い続けた。
「もういいです!」
義母がガチャッと電話を切った。
これで良かったのか。受話器を置くと同時に罪悪感が押し寄せた。
よく読まれている記事