放っておく事が相手の為
朝からインターホンが鳴り慌てた。
時計を見ると8時。
今日もまだ腹の鈍痛が治まらず、時々刺すような痛みもある。
電気毛布から離れず寝ていた私は下着も付けずにTシャツ短パン姿だった。(短パンなのは直接肌に電気毛布が触れる方が温かさを感じる為)
朝のインターホンと言えば、ほとんどが近所の人。
だがさすがにこの早い時間には誰も来ないだろうと油断していた。
私は急いで毛布から飛び出し、インターホンの画面で応答した。
「はい」
すると聞き慣れた声。
「私よ、ころりさん、開けてくれる?」
まさか。その声は義母。
一気に気分が落ちたが、玄関に立っている義母を放っておく訳にもいかず下着をつけ、短パンからロングパンツに履き替え外に出た。
義母は両手にスーパーの袋を持ち、「あぁ、ごめんなさいね、ころりさんが体調を壊してるって聞いたから心配で」と言いつつ、家の中に入った。
「そんな…お義父さんは?私は大丈夫ですから、お義父さんと一緒にいてあげて下さい」
私は何とかこの場から帰ってもらいたくて必死になったが、義母は
「あの人はただの風邪よ。薬飲んで寝ているから大丈夫よ。それよりころりさん、大丈夫?無理しちゃだめよ」
そう言いながら、スーパーの袋を持ったままキッチンに入った。
「今日はたくさんおかずを作っていきますから、ころりさんはゆっくり寝ていて下さいよ」
「いえ!本当に大丈夫です!それに私あまり食欲がないので、作って頂いても食べられないし」
義母がキッチンに立つ事さえも嫌だったので私は必死。
それでも義母の、「どうせ息子の分も作らないとダメでしょ?私が助けてあげたいんだから気にせず寝ていなさい」と言われ負けてしまった。
だが寝ているどころではない。
ソファで電気毛布に足を包んだものの、横目で義母の動く様子と作業する音をずっと観察してしまった。
あちこち引き出しを開けている音。
ガサガサと袋を開ける音を聞いては、あぁ、粉がこぼれていないだろうかと気になり、ジュワッと油で揚げる音を聞いては、油が飛び散っているのでは…とハラハラする。
義母は私を気遣いタクシーに飛び乗り買い物までして来てくれたのだろうが、こちらはさっきまでの一人の時間が突然騒がしくなり、精神的に疲れるばかり。
放っておいてくれる方が余程有難い。
だがこの気持ちがどうしても義母には分からない。実母も同じタイプなので、この年代の母達は放っておく事が相手の為になるいう考えは一切あり得ないのだろうか。
朝8時に来た義母は、ビッチリ夕方の16時までうちに居た。
疲れた。まるで他人の家にいるようだった。
そして犬嫌いの義母が来ると愛犬まで居心地が悪そうだった。
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